忍少年と碧血丹心 022

周りはナオが何を考えているのか分かっていない様子だったが、忍という名の火山を沈めてくれた事に安堵したようだ。
空気は直ぐに軽さを取り戻す。

「あっ。やだぁ。零れちゃった…」
「はい、空ちゃん。タオル」

「ありがとう」

ふいに、ナオはより一層忍の二の腕に手を絡め、零れてしまったスカートを慌ててタオルで拭き始めた少女―――空ちゃんに視線をおずおずと投げかけた。
その愛らしい仕草は、女性ですらその頭を撫でたくなるものだった。

「―――ねぇ?そういえばさっきの罰ゲームってまだ終わってないよねぇ?」
「ああ…そういえばそうでしたね」
「あと一回、だっけ…?」

互いに顔を見合わせて、空ちゃんと二人の青少年達は顔を見合わせて確認を行う。
僅かに、目元を和ませているナオの瞳が獣染みた気配を含ませて、忍の裾を子供のように引っ張って促した。

「ねぇねぇ、ならチャンスじゃん。最後の一回、忍にやってもらおうよ」
「「「えっ―――?」」」

「空ちゃんイかせるだけのテクがあれば周りも忍を『男』として認めてくれるだろうし。キングとは『そういう関係じゃない』って証明出来るよ…?」

逆を言えば、そうしないとここで『男』として認められないとでも言うのだろうか。

―――なんてめちゃくちゃだ。

クソもヘッタくれもあったものではない。
しかし沈黙も一瞬だった。
互いに顔を見合わせ、ナオの言葉の意味を正確に読み取って、まるで新しいゲームでも思いついたように笑みを深くしていくのだ。
こうして、その場がこの一言で一気に盛り上がったのである。
カウンターではその熱気ぶりを聞いて、『ユウジ』が止めに入ろうとしたが、既にそれは収集がつくような状態ではなかった。
『ユウジ』は自分の事のように顔を青ざめて、忍と一度でも視線を合わせようと凝視するのである。
しかし、人の視線が一気に集まった空間の中、忍がそれに気づけるような状態ではなかった。

一人その場に取り残された忍は今度こそ慌てる。

―――冗談じゃない、と

「それはいいですね!空ちゃんも結構気に入ってたみたいだし、いいんじゃないですか!ねぇ?」
「うん。いいかも、それ」
「ちょっと待ってください…!!俺はそんなの―――」
「―――ねぇ、どう思う?いい案だと思わない?」

忍の制止の声を遮って、ナオはさも詫びれもなさそうな顔で、カウンター席の王座を見上げた。

悪戯を仕組んだ子供のように妖艶に笑む。

「―――『キング』<王様>…?」

一同が一斉に群れの中心、絶対的教祖者、絶対君主の男『キング』に注がれた。

line
-22-

[back] [next]

[top] >[menu]


人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -