8:船

船に戻ると、出航の準備がされていたようで。
私達が乗り込むとすぐに船は出港した。


それから少し海軍とやりあっていて。

私は手錠が外されていてもう逃げることができるはずなのに、何もせずそのまま彼らの戦闘を見守った。


「しっしっしっ。良かったなお前海軍から逃げられて」


海軍から逃げ切ってから麦わらが私に声をかけてきた。


その言葉を聞き私は彼を睨む。


「私は海軍から逃げたいなどと言っていない!」


だいたい敵であった私を、危険を顧みずにわざわざ海軍に喧嘩を売ってまで助けるとは。
コイツの頭の中はお花畑なのかと私は思った。

私を助けて何の利が彼らにあるのだ。

そんな睨む私を、麦わらの後ろにいた緑色が見て鼻で笑う。


「はっ、助けてくださいって言ってた奴が何言ってやがる」


緑色の言葉に私の血液が熱を持った。


聞いて、いたのか!?


「なっ幻聴でも聞こえたんだろう、私がそんな事を言う訳ないだろ。このマリモ男!」

「ああ゛?何だとテメェ、斬るぞ!」

「なんだ。つまりマリモは私を自分の手で殺すために助けたのか?それなら分かりやすいな。今手元に刀はないから、私はあなたと剣士としての勝負はできないけど。私は悪魔の実の能力者でもあるから殺しにくるのなら簡単に負けないよ、私の海桜石の錠を外したことを後悔するんだなマリモ!」

「だから船長命令だっつったろうがこの馬鹿!だいたいマリモマリモ言うんじゃねェ、男女!」

「………」



私は男女と言われた事で、思わず口をつぐんだ。


……そういえば、この麦わらに胸が無いと言われたな。

そんなに私は胸が無いのだろうか。


私は思わず自分の胸を見下ろした。


確かに無かった。


「くそマリモ!てめえ、レディに向かってなんて事言いやがる!」

「元々はテメェがマリモっだつーからコイツが覚えたんだろうが!」


なぜか別の喧嘩が始まった。


二人はこれでもかとお互いを貶しあっている。

私はそれを唖然として見ていると、麦わらが目の前に来た。


「おまえ面白ェな!」

「それは初めて言われた。麦わら、私を海軍から連れ出して何の用だ?何か理由があるのだろう」

「ああ、そうだ!」


やはり理由があったのか。

なんだ?母の持っていた財宝の隠し場所か?
あの島には置いていなかったからな。


だが私は聞かれても拷問されてもそれは話すつもりはない。


「おまえって悪魔の実の能力者なんだろ?」

「そうだが。」

「何の能力なんだ?」


・・・・・


「オイ、ルフィ。もしかして助けた理由って、それだけなのかよ?」

「ああ、そうだぞ!」


長鼻の質問に麦わらはあっさりと頷いた。


「そ、それをだけで海軍に喧嘩を売ったワケ?」


長鼻とオレンジ髪はどんよりと落ち込み始めた。
そんな様子に黒髪の女性は面白そうに微笑んでいる。

オレンジ髪の女が落ち込むのは当然だろう。

今回、海軍に喧嘩を売った事で確実に懸賞金が上がっただろうし。

少し同情した。


「で、おまえの能力って何なんだ?」


「そんな事、言う訳がないだろ」




麦わらが聞いてきたので私は即答した。
助けられたといっても、答える義理など無い。

それから麦わらはしつこく聞いてきたが、私は頑として答えなかった。

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