7:空
私は島長の宣言通りに海軍へと引き渡された。
この島を出たらすぐに処刑が待ち構えていることだろう。
私は手錠をされたまま海軍の船へと連行される。
私はあまり面だって行動していなかったので、一般人を殺したことは無かったが。
海賊に組していたことは変わりないので、死刑レベルの裁きを受けるだろう。
私を島へ連れ歩かないのは、母の愛情だと思っていた。
けれど、母は島長に私の姿を見せたくなくて連れていかないだけだったのだろう。
船内に入る前に私は空を見上げた。
皮肉なほど、雲の無い大きく広い青が広がっている。
ああ、なんて汚い空だ。
「さっさと進め」
私が空を見上げたのが気に食わなかったか。
海軍は私の背中を蹴った。
手錠は海楼石でできているため私は力が入らずに船内の床へと倒れた。
なんて情けない姿だ。
床に倒れたのと同時に、私は認めていないのに私の目からは涙が零れた。
ははは、はは・・・。
なんでだろう。今頃になって私は何故泣いているんだ?
このまま連れて行かれれば、私は母に会える。
でも、私は母にあいたいのか?
いや、あの海賊達の前ではそう言ったが。
私はもう、母に会いたいとは思っていなかった。
ずっと信じていたのだ。
私は母に必要とされていると。
必要とされるだけで良かった。
そうすればどんな罪でも背負えると思っていた。
なのに、私は愛していた母に海へ落とされた時絶望した。
私は必要とされるだけではなく、母に愛されたかったのだ。
結局、私を殺そうとした母は、私の事などなんとも思っていなかった。
愛してなどいなかった。
そんな事あんな海賊に言われなくとも私にだって分かっている。
麦わらの海賊たちに母に会いたいと言ったのはただの強がりだ。
彼らは私が母をまだ愛していると思っているだろう。
馬鹿な女だと思っているだろう。
それで良い。
私には、何も無い。
それが分かってしまった。
「…誰か、助けてください」
何を言っているんだ私は。
何に助けを求めているのだ?
馬鹿じゃないのか?
ほら、海軍どもだって私を馬鹿にした目で見下ろしている。
悪い海賊が助けを求めるなんて。なんて傲慢な。
私は涙で歪む視界で海兵を倒れたまま見上げると。
次の瞬間海軍の男達は吹き飛ばされた。
「おい」
その声に私は驚いて、戸惑いながらも上を見ると、そこには緑色の頭があった。
私はその姿にすぐに身を起こす。
「……また、あなたか?海軍の船で何をしているんだ。」
「不本意だが、てめェを連れ出すように船長から命令があったからな」
ゾロはそう言って海軍が持っていた鍵を使い私の手錠を外し、私が驚いているのに意を介さずにまだ力の戻らない私を肩に担ぐと。
海軍を蹴散らして船中から脱出した。
「な、テメェっおれに雑魚押し付けやがって。ナニ自分はいい格好してんだよ!」
「うるせえグル眉」
「なんだとマリモヘッド!」
どうやら海軍の船に奇襲していたのは緑髪だけではなかったようだ。
私達が外に出てすぐに金髪が駆け寄ってきて、すこし離れたところでは麦わら帽子も見えた。
「おい、ルフィ!レディは見つけたからさっさと退散するぞ!」
「おうっ、分かった!逃げるぞ、野郎ども!!」
金髪の言葉に麦わらは緑髪に担がれた私へと視線を移すと、まったく曇りの無い笑顔で私を見て笑った。
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