5:欺
目が覚めるとそこは薬品臭い部屋のベットの上だった。
私は頭が働かなくてぼうっと天井を見ていたが。
すぐに今までの事を思い出し上半身を起こしたら、ベットの下から悲鳴が上がった。
痛む体を堪えて私は悲鳴の元へ視線を落とすと、そこには麦藁と共にいるのを見た小さな生物がいた。
「なんだ、たぬきか。」
「たぬきじゃねェ!トナカイだ、このやろう!!」
「哺乳類には変わりないだろ。」
「範囲がでけェよ!」
トナカイだとコイツは言うが。
トナカイは普通2本足で歩かない。(←狸も普通歩きません。)
おそらく、悪魔の実の能力者だろうと判断する。
「まあ、そんなことはどうでも良い。おい、哺乳類。母はどこにいる」
「おまえも哺乳類じゃねえかよ!?それにおれの名前はチョッパーだ!」
「だからそんなことはどうでも良い、答えろ。二度は言わない、母はどこにいる」
「二度言ったぞ!?おまえ実はアホだろ!」
・・・まったく話が進まない。
私はベットから立ち上がろうとしたが、床に下りた瞬間に立ちくらみを起こして床に倒れた。
「おい、大丈夫か?」
チョッパーは私に恐る恐る近寄ると、私を覗き込むようにして心配してきた。
体がうまく動かない。
「おい、なんの音だ?って起きたんだね、麗しきレディっっ!!」メロリーン
「あっ、あなた起きたのね!」
私が倒れたのを聞きつけてか、中に入ってきたのは金髪男とオレンジ髪の女だった。
ここは、こいつらの船なのか。
「私の母はどこだ。」
私は聞きたい事はたくさんあったが、今一番知りたい事を二人に言った。
すると2人は眉を寄せた。
「あなた・・・あの海賊の親玉はあなたの母親じゃないわ。あなたの本当の母親はあの海賊に殺されたの。」
「そうか。だから、なんだ?」
「え?」
部屋にいる三人は驚いた顔をした。
「私はそんな事どちらでも構わない。私の母親はあの人だけだ。」
「でも、あいつはあなたを殺そうとしたのよ。」
「どちらにしろ、私は母の為に死のうとしていた。母が私を利用して生き延びようと変わりはしない。」
「どうしてそこまで。」
「たとえ君たちの言う事が本当のことだとしてもだ。私はずっと船長を母だと思って生きてきた。今さら他に母だと認められる訳がないだろう。」
私の母はあの人だけだった。
すべてのモノは母が与えてくれて、私は母の為に非道な事も行ってきた。
今さら本当の母親なんて、私には何の意味も無い。
それに私は島長と血が繋がっているなど、反吐が出る。
「それが、君の答えなんじゃな。」
突然開いた医務室の扉の向こうには老人と麦わらの海賊の船長と船員が立っていた。
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