雨模様 | ナノ
第4話

いた。まじでいた。

オッサンから飲み物を受け取るバカ。オッサンがさっきのゴミ袋に声を掛けにいくのを好奇心に従って見ていたオレはそのやり取りにほとほと呆れていた。フツー受け取るかぁ?

疑ってはいるものの押し負けて受け取ってしまったことはやり取りを見ていればわかる。どう断っていいのか分からず困っているそいつをオッサンは楽しそうに見下ろしていた。うえー絵に描いたような嫌なヤツ。手、震えてんじゃん。流石に見てらんねーつの。

「トンパさーん!さっきのジュースもっとくれる?」

「え?あ…ああ。いいぜ」

「キンチョーしてるのかなー。ノド渇いちゃって」

オッサンから残りの缶を全て奪い一気に飲み干して「あーうまい!」と笑顔を作った。

「心配?」

自分が飲まないといけない状況にいた時よりも落ち着きのなくなったゴミ袋と、一向に苦しむ様子のないオレに訝しげな目を向けるオッサン。

「オレなら平気だよ。訓練してるから。毒じゃ死なない」

さらに笑みを深めてそう言ってやればオッサンは冷や汗をかきながら固まった。用事は済んだしもうここにいる意味もない。空き缶をオッサンに手渡して踵を返す。

「ま…って、」

立ち上がったゴミ袋の背丈はオレと同じくらいだった。深く被ったフードに全身を覆う黒マント。顔の大きさに不釣り合いなサングラスとマスク。体型も年齢も性別も曖昧にしてしまう装いのせいで気がつかなかったけど、こいつオレと同い年ぐらいじゃん。見た目拗らせすぎだろ。




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