雨模様 | ナノ
第37話

無事パドキア地方に到着した私たちは現在ククルーマウンテン行きの観光バスに乗っている。バスは山道をどんどん登っていき巨大な門の前で停止した。ククルーマウンテンは遥か遠くにあるけれどここから先は全てゾルディック家の敷地のため一般人は入れないらしい。

門の前で降りたのは私たちと二人の男の人だけ。男の人たちは守衛さんの所に行き門を開けるように脅しをかけた。

「門を開けな」

「こ…困りますよ。あたしがダンナ様に叱られるんですから」

「心配すんな。どうせあんたの御主人はオレ達に始末される」

守衛さんの制止を振り切って門の中に入っていった二人組は一瞬で白骨になって戻って来た。守衛さんによるとこの門の中にはミケという巨大な生物がいるらしい。そう簡単にキルアを取り戻せるとは思っていなかったけどここを正面突破するのは大変そうだ。

「守衛さん。あなたはなぜ無事なんですか?あなたは中に入るんでしょう?中に入る必要がないのならカギを持つ必要もないですからね」

「…いいとこつくねェ」

クラピカの問いに守衛さんはニヤリと笑ってこの中に入る本当の方法を教えてくれた。

それは片方2トンある試しの門を自力で開けることだった。一番身体の大きいレオリオですら片方2トンの扉を開けることは出来なかった。だけど侵入者用の扉から入ればミケの餌食になってしまう。今、この扉を開けるしかキルアに会う方法がない。

「どうしよう…」

小さく呟くと守衛さんはにこりと笑ってとある提案をしてくれた。

「もしよければこの家で特訓してみませんか?もちろんこのまま山に向かってもらっても良いんですが多分それも納得いかないでしょう?」

守衛さんの一言で私たちは暫くの間執事たちの住み処で修行をすることになった。そこでやたら重い靴やベストを身に付けさせられる。湯呑みですら20キ口もあるようだ。座るためにイスをひいたときもその重さに驚いた。

「どうです?吃驚するくらい重いでしょう?お嬢ちゃんは一ヶ月じゃ少し厳しいかもしれないけど頑張るんだよ」

「…絶対、開ける…」

「ははっ、頼もしいね。だったら試しにどんなものかやってみるかい?」

目標の難易度を知っておきたかったからその提案はとても有り難かった。

身軽になって扉の前に立つ。皆から無理は禁物だと止められたが私だって正々堂々キルアに会う資格を得たい。

「わっ、開いた!!」

「ほぉ…これは驚いた」

「すげーなハル…」

「ハルは…一体何者なんだ?」

意味よくわからなくて聞き返すと「何でもない。気にしないでくれ」とすこぶる気になる反応が返ってくる。

これからは今まで以上に力が必要になる。もっともっと強くなってその先の扉も開けられるように特訓しなきゃ。




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