雨模様 | ナノ
第36話
ここを出発する前にククルーマウンテンとゴンのお父さんについて調べた方が良いというクラピカの意見に沿って電脳ページでめくることにした。めくるっていうのは電脳ページ専用の用語で調べると同じ意味らしい。
「まずはククルーマウンテンで調べてみよう」
電脳ページによるとククルーマウンテンはパドキア共和国デントラ地区にある標高3722メートルの山らしい。
「パドキア…?知らねーな。どこの国だ?」
「…私、知ってる。故郷…だから」
「故郷!!?」
「へえーそうなんだ!じゃあキルアとハルって同じ国の出身だったんだね!」
「そ、う…みたいだ…」
確かに私の家からは大きな山が見えていたけどまさかあれがキルアの家の一部だとは思いもしなかった。今更だけどククルーマウンテンって聞いたことがある。パドキアの有名な観光地だ。
「パドキアは一般客でも…行ける。ここからは…飛行船で、3日くらい…だったとおもう…」
「どうやらそのようだな。出発はいつにする?」
「今日のうち!」
「了解。チケットを予約する」
こうして私たちはその日中に飛行船に乗ってククルーマウンテンへ向かった。ゴンのお父さんについてもめくってみたが、極秘指定人物に認定されていて何の情報も得られなかった。
「3日かー。結構長いよね」
「そうだな。もう少し早く着く交通機関があれば良いのだが…。ハルは行きもこれに乗ったのか?」
「う、ん…」
ハンター試験の会場を伝えたら主人が給料と称して飛行船代だけ出してくれたのだ。流石に申し訳なくて「私、泳いでいきます」と告げたら「お前、阿呆なのか?どう考えても間に合わないだろ」とスッパリ切られて二の句も告げずお金を受け取ったことを思い出した。主人にもちゃんと御礼しないとな。
「前々から聞きたかったんだがハルはどうしてハンターになろうと思ったんだ?勿論言いたくないなら構わないが」
「あ、の…大した理由じゃなくて…それにキルア助けたら…ハンター辞めるつもりで…」
「「「ハンターを辞める!?」」」
一斉に詰め寄られて思わず身を引いた。まさかこんなに大きい反応が返ってくるとは思いもしなかった。
「なんで!?せっかく受かったのに勿体ないよ!」
「何か理由があるのか?」
「お金のために…受けたから…」
「それって前に言ってたお父さんのこと?」
そういえばゴンには少しだけ話したんだっけ。聞いていて面白い話でもないからあんまり話したくないんだけど皆の目が聞きたいと言っている。今更引くわけにもいかないので、つまらない話だと前置きをしてから、私は自分の半生とハンター試験を受験した理由とハンターをやめる理由を手短に話した。
「ハルはほんとにそれで良いの?せっかく頑張ったのに…」
「…義父の頼み、断れない…お金も心配…だし」
そう言ってほんの小さく笑うと斜め前に座っていたレオリオが突然立ち上がり、私の両肩を思いきり掴んだ。吃驚して身体が跳ね上がる。
「レオリオ!」
「わかってる!相手は女の子だからな。手荒な真似はしねーよ」
「(いやもうしているだろう…)」
「いいかハル。お前が近年稀に見るとんでもない良い子だっつーことはよくわかった。けどな、オレに言わせりゃお前の家族は最低だ!そんなやつらのためにハンターを辞める必要なんて絶対ねえ!」
あまりの迫力にたじろいだ。サングラスで見えないはずなのにレオリオの目は私の目を正確に捉えていて、彼の言葉は私の中に真っ直ぐ入ってきた。
「今回ばかりは私もレオリオに賛成だ。見返りを渡さないと禄に食べ物すら与えてくれなかった連中に恩を感じる必要は微塵もない」
「どうしてもお金が必要なら別の方法を考えようよ!ハンターを辞めない方法なんていくらでもあるって!」
どうして皆、こんなにも親身になって考えてくれるんだろう。あまりにも優しすぎないか。気になって尋ねてみると三人揃って「友達だから」と即答してくれた。
「……あ、りがと」
ハンターを辞める以外で短い時間で大金を稼いでくる方法なんてあるんだろうか。ハンターを辞めずに、家にも帰らなくてもいいなんて…完全な自由じゃないか。そんな素敵なものを私が手にしてしまって良いのかな。
この場にはいないけどキルアならきっと「良いに決まってんだろ!」といって笑うんだろう。この後のこと、もう少し前向きに考えてみよう。
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