雨模様 | ナノ
第27話
試合開始直後に突然震え始めたハルを見て四次試験中に話していたことを思い出した。ハルは人に視線を向けるのも向けられるのも得意じゃないらしい。今回の試験は他の受験者に見られながら行うもの。ハルにとっては怖くて不安で仕方がないはずだ。よく考えればわかることなのに、試合前にくだらない嫉妬で声をかけずにいた自分をぶん殴りたい。
「キルア、ありがと…」
試合が終わるとハルは一目散にオレのところに駆けつけてきて頭を下げた。別の意味で頭を下げたいのはオレの方だけど今ここでそんなことをしてもこいつを戸惑わせてしまうだろうからやめておく。
「なーんか不気味な試合だったな」
「…うん、なんだったのかな…」
怪我がなくて何よりだけど試合内容自体はかなり不自然なものだった。
「お前ヒソカの弱みでも握ってんのか…?実はすげー強いとか…?」
「に、握ってな…い…!強くも…ない…」
半分茶化しているレオリオに対して大袈裟に首を振るハル。結局最後まで実力はわからなかったけど流石にヒソカより強いってことはなさそうだよなあ…
「何か思い当たる節はあるか?」
「…実は四次、試験の時も…ヒソカに会ってて、その時…も、見逃して…もらってる。理由は…よくわからなかった…けど…」
「そうか」
クラピカは顎に手を当て少し考えるような素振りを見せたが、すぐに「奴の言動は理解しようと思って出来るものでもなさそうだ」と小さく溜息を吐いた。
「何にせよ合格したことには変わりない。おめでとう、ハル」
「そうだな!一抜けおめでとさん」
「…あ、りがとう…」
合格した割にそこまで嬉しそうな様子のないハル。むしろ落ち込んでいるようにすら見えた。
「ハル!こっちでゴンの試合見よーぜ」
「あ、うん…!」
少しだけハルの話が聞きたくてわざとクラピカたちと距離を置く。ゴンの試合は…正直気持ちよく見れそうになかった。素直に寄ってきたハルに「言い忘れてたけど合格おめでと」と言うと思っていた通りハルの顔が曇る。
「嬉しくねーの?」
「え、あ、……そ、そう見える…?」
「わかりやすすぎ!顔真っ青だぜ」
「…キルア、周りよく見てる。すごい」
素直に感心するハルに「まあな」とだけ返す。お前のことしか見てねーよ。言わないけど。
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