雨模様 | ナノ
第24話

オレたちは試験終了まで辺りを散策することにした。ハルは「隠れなくていいの?」と心配そうにしていたけどこの土壇場でプレートを集められていないやつからの奇襲に怯える必要なんてない。「返り討ちにしてやろーぜ」と笑ったらハルは神妙な面持ちで「頑張る」と頷いた。

戦闘を意識したからか隣にいるのにどんどん気配が薄くなっていくハルに「気配消さなくていーって。疲れんだろ?」と言うと「え…あ…ごめん無意識だった…」と返された。はあ…?この精度を無意識でできるって化け物かよ。身を守る術は雇い主から教わったと言っていたけどただの店主が気配を消す技なんて知ってるもんなのか?本人に隠すつもりはないんだろうけどやっぱりハルの周りは謎だらけだ。

「…キルア、ちょっと…」

足を止めたハルが手招きをする。近寄ると耳元に顔を寄せられて心臓が跳ねた。

「ずっと思ってて…言えずにいたんだけど、あの…私たちって…監視…されてる…ような」

「ん、されてるな。試験だし何が起きてるか把握しとかなきゃなんだろ」

「害は…ない…?」

「あったらどうする?」

不安そうなハルに出来心でそう尋ねてみる。試験官がオレたちに危害を加えることなんてまずないだろうけど。自分に害をもたらす存在に対してハルがどう行動するのか興味があった。

「………」

真剣に悩むハル。その沈黙を破ったのは盛大に鳴ったハルの腹の虫だった。

「あははっ緊張感ねーな!」

「う、…ごめ…お腹すいて…」

腹を押さえて音が外に漏れないように縮こまるハル。そういえば合流してから何も口にしていなかった。何かなかったかなーとポケットに手を突っ込むとまだ封を開けていないお菓子を見つけた。

「これ食う?オレの好きなお菓子」

「…チョコ?食べたこと、ない…」

「マジ!?食ってみ!ほら」

オレの好きなお菓子ならオレが食べるべき!なんて言い出しそうだったから拒否する暇を与えずに口の中に放り込んだ。

「わ、わ!これ、美味しい!」

「だろ!」

ぱああと表情を輝かせ「あまい!」「柔らかい!」「溶けた!」と嬉しそうに感想を伝えるハル。こんなにはしゃいでいるハルを初めて見た。

「キルア、ありがとう!」

「……大袈裟すぎ」

ふわりと微笑まれた瞬間、自然に「好きだ」と思った自分に驚いた。

でかいサングラスのせいで未だにどんな顔をしているかすらわからないし性格だってかなり変わってる。好きな理由を思い浮かべてもパッと出てこないのに一度そう思ってしまったらもうどう頑張っても否定することができなかった。




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