雨模様 | ナノ
第18話

三次試験を終えて直ぐにハルの姿を探したけど意外と残っている合格者たちの影に隠れてしまっているのかどこにも見当たらなかった。ホント気配がないのって厄介。この環境で気配消す意味あるかー?あとで会ったときに言っとこ。不合格の可能性が有ることには気が付かないフリをしてゴンたちとともに塔を出る。

「あ!キルア、ハルいたよ!」

「お、ホントだ。おーいハルー!」

遠くにいるハルに2人で手を振るとこちらに気がついたハルが控えめに手を振り返してくる。今のハルはトレードマークの黒マントを外しているせいで更に分かりにくくなっていた。そういやあのときすげー返り血浴びさせちゃったもんな。

「誰かと一緒みたいだね。あの人と一緒に試験受けてたのかな?」

ゴンの言葉でハルの隣に見知らぬハゲがいることに気が付く。他人と喋るときは大体口を一文字に結んでいるハルがそいつとはすっかり打ち解けたように話していた。

「かもな。なんか親しげだし」

「キルア、行かなくていいの?」

「いーよ。そろそろ説明始まるだろ」

別にあいつが誰と話そうがオレには関係ない。…関係ない、けど!すっげー面白くないし、なんかムカつく!

『キルアはハルが大好きなんだね!』

くそ、ゴンのやつ余計なこと言いやがって。本当は今すぐにでもハルのところに行きたいけどそれをしてしまったらさっきのゴンの言葉を認めることになってしまう気がして出来なかった。我ながら意識しすぎで笑えてくる。

4次試験は孤島での1週間のサバイバル。その間に6点分のプレートを集めた人だけが次の試験に進めるそうだ。それぞれターゲットが決まっていてそいつのプレートを奪えばそれだけで合格点に足りるらしい。自分のターゲットを決めるために順番にくじを引いていく。

次はハルの番だ。緊張しているのか動きがいつにも増してぎこちない。……あいつのターゲット、誰になんのかな。もしオレだったらどうする?ハルがオレに攻撃を仕掛けて来たときオレは本気でハルを迎え撃てるだろうか。ハルは結構強いから戦うことになったら殺す気でやらねーと多分負ける。オレはハルを殺せるか?

「次キルアだよ!」

「ん、行ってくる」

なんとなくハルに目を遣るとハルもこちらを見ていてサングラス越しに目があったような気がした。「行ってらっしゃい」と口パクなのにつっかえてるハルが可笑しくて、…ちょっとかわいくて。やっぱりオレはこいつのことを殺せそうにない。もしハルがオレを狙うならその時はこんなプレート渡してしまおう。

「なー、ゴン。オレってやっぱりあいつのこと好きだと思う?」

浮き立つこの気持ちにどう名前をつけていいかわからずくじ引きから戻ってすぐにゴンに聞くと「自分のことなのにどうしてオレに聞くの?」と首を傾げられる。

「キルアは今どうしたい?」

「………あのハゲとハルの間に割って入りたい!さっきから距離近すぎじゃねえ!?」

「あははっ、うん、行ってきなよ!」

ああ、そっか。オレはいつの間にかハルの1番になりたいって思うようになったんだ。言葉にしてようやく気がついたオレはゴンに見送られながらハルの元へ走り出し……ん!?あいつどこいった!!?




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