雨模様 | ナノ
第17話
キルアたちが戻って来ない。通過のアナウンスが流れる度に顔を上げて確認しているが戻って来るのは知らない人ばかりだった。
「……っ」
44番が通過したアナウンスが流れて出口を見ると私の視線に気がついたのかサングラス越しに目があってしまって驚いて息を呑んだ。この人ってたしか前にキルアが気をつけろって言ってたヒソカ…だよね。こちらに向けてトランプをひらひら振りながら微笑むヒソカにどう反応していいかわからず、気がついていないフリをして自らの膝に顔を埋めた。
少しするとヒソカやキルアたち以外の誰かが近づいてくる気配がしたのでそちらに視線を向けるとスキンヘッドの男性が驚いたような顔で私を見ていた。
「お、気がついたか。やっぱその一番は伊達じゃないみてーだな。マスクとフードはもういいのか?最初はもっと完全防備してたよな?」
「……あ、」
「お前がフードを外したときは驚いたぜ?ガキだってことはわかってたがまさか女だったとはな。なんでハンター試験なんて受けてんだ?」
「……そ、」
「あ、そーいやまだ名乗ってなかったな。俺はハンゾーだ。ここだけの話だけど実は俺忍者なんだよ」
「………」
なんてお喋りな人なんだろう。話題がポンポンと変わりすぎて相槌を打つことすら出来なかった。ここだけの話を会って間もない私に話してしまって良かったんだろうか。
「それで忍者の修行っつーのが」
それからハンゾーは私に自分のことを色々と話してくれた。なんで私に話しかけたのかわからないけどたぶん試験終了まで何もしないで待ってるのが退屈だったのだろう。話の進みが早くて相槌も満足に打てなかったけど気を悪くした様子はなくてほっとした。
「つーかお前マント血塗れだぞ」
「え、あ、…そうだ…返り血…」
「げえ…他人の血がついたマントずっと着てたのかあ!?」
そういえば飛行船の中でかなりの量を浴びていたんだった。洗おうと思ってすっかり忘れていた。私はあまり気にしないけどハンゾーがかなり引いてるみたいだし一度外しておこう。このあと洗う時間はあるだろうか。マントの血生臭さに眉を顰める。
「……あ、」
キルアたちが近づいてくる気配を感じて出口付近に視線を向けると、試験終了のアナウンスとともにキルアたち一同が戻ってきた。すぐに側に向かおうとしたのだが「お前の連れ、戻ってこれて良かったな」というハンゾーの言葉で彼の存在を思い出し踏みとどまる。すぐに4次試験の説明に移るみたいだし、それが終わってからキルアたちのところに行こう。
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