雨模様 | ナノ
第15話
三次試験の内容は塔の頂上から72時間以内に降りてくることだった。壁をつたって降りるとこの辺りを縄張りにしている人食鳥の餌食になってしまうため塔の内部から降りるのが賢明だそうだ。頂上には無数の扉が用意されていてどこから入っても降りられるとのことだった。
「ここにもあったよ!」
「結構数あるみたいだな。どうする?入るか?」
「その前にレオリオとクラピカにも教えてあげようよ!それで皆で同時に入ろ」
「ん、そうだな」
キルアとゴンが二人を呼びに行っている間に下見も兼ねて頭を半分だけつっこんで中を覗いてみる。暗くて底が見えない。階段が用意されていないみたいだけどどれくらい落下するんだろう。
「っ、わっ」
「お、悪い」
突然誰かが私にぶつかって頭だけでなく身体ごと扉の中に入ってしまった。咄嗟に体勢を整えようとしたが掴むところが何もなく為す術もなく落下していく。
「ハル?!どーすんだよオッサン!オッサンがぶつかったせいでハル落ちちゃったじゃん!」
「だから悪かったって!前見てなかったんだよ!」
「…仕方ない。私たちも入るぞ」
幸い落下距離はそう長くなく、受け身も間に合ったため無傷で済んだ。少しだけ待ってみたが誰かが来る気配はなかった。三次試験は一人で挑むもののようだ。
目の前には幾多の分かれ道と〈迷路の道。全ては運次第〉と書いてある看板がある。この試験が当てずっぽうでどうにかなるとは思えないし運以外の攻略法があるのかもしれない。他の扉から入った受験者の気配を辿ってみるとほんの僅かだけど感じることができた。下に降りるのが合格条件だから下の方にいる受験者の気配を辿ってそこに近づけそうな分かれ道を進んでみよう。
「(この短時間でここまで来るか。運要素だけにしたつもりだが自分より先を進んでる他受験者の気配を辿られるとは…)」
「!?…だれか、いる…?」
「(ここの気配まで読めるのか。実力も申し分ない)」
何もないはずの空間からこちらを伺う視線を感じた気がして声をかけてみたのだがそこには何もなかった。集中する時間が長いせいで過敏になりすぎているのかもしれない。
それから何時間歩いただろうか。私の前に再び看板が現れた。そこには〈ここが最後の分かれ道。右に進めば3分だが迷ったら振り出しに。左に進めば一本道だが攻略に50時間かかる〉と書かれていた。
「(間に合う…かな)」
時計を見ると残りはちょうど50時間だった。3分で着くのは嬉しいけどその過程でどれだけ分かれ道が用意されているかわからない。体力は余っているけど集中力は保ちそうになかったので50時間かかる道に入っていった。
こうして真っ直ぐな道をひたすら走っていると、ようやく明かりが射し込む扉が見えた。扉を開けると広い空間が見え既に数人の受験生が休んでいた。
「1番ハル!三次試験通過第7号!所要時間43時間39分!」
三次試験を通過したことに安心してほっと一息つく。50時間というのは脅し文句だったのか実際は25時間くらいで辿り着いたみたいだ。
今会場にいる人たちは知らない人たちばかりだったからなるべく目立たないように端の方でキルアたちが来るのを待つことにした。
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