Pray | ナノ
明日は初の公式戦。今まで溜まっていた分を全部ぶちまけてやろうと心に決めていた。だからいつもは途中で投げ出す雷市との自主練も最後まで参加したし疲れを取るために早めに風呂にも入った。なのに、なぜ。
「うおおおすげえええ!ぐいーんってなったぞ!見たか渚!?」
「見たよ。100回以上」
なぜ俺はこんなところで既に穴の開くほど見た青道のビデオを見直しているんだろうか。正直いつもより多目に練習したせいでかなり眠い。
さっきまで三島と秋葉も一緒に見ていたけど、俺に面倒なやつを押し付けて先に部屋に戻ってしまった。裏切者め!
「雷市。俺もう眠い。寝る」
「!!!」
「なんでそんな驚いてんの」
「だって朝まで一緒に見るって…」
「誰がんなこと言うか!例え意識がなかったとしても言わねーよ!」
叫ぶようにそう言うと雷市は今まで以上に目を丸くした。
「お前…意識がなくても喋れんのか…?」
「…は?」
「すげえ…。お前野球でもすげーやつだけど、そんな特技も持ってたのか…!すげえすげえ!」
「待て待て待て。俺今すごい勢いで置いてかれてるんだけど」
なぜかわからないけど雷市が尊敬の眼差しを向けてくる。人の話なんて聞いちゃいない。
「え…?お前らまだ見てんの?」
「真田先輩!!!いいところに!この体力お化けどうにかなりませんか!?朝まで付き合えって…」
俺たちの様子を見に来た風呂上がりの真田先輩に助けを求めると、真田先輩はニっと笑ってこう言った。
「まあまあ。雷市に付き合えんのなんてお前くらいなんだから付き合ってやれよ」
「他人事だと思って…!」
「おおお!?」
見捨てられた怒りを込めて真田先輩を睨み付けている間に雷市のテンションがまた一段階あがったようだ。
「渚!渚!こいつの球変!絶対何かあるよな!なあ、渚!」
「渚渚うるせーな!黙って見て……って、ほんとだ。なんだこれ…画面にはあんまはっきり映ってねーけど…」
「(なんだかんだ良いコンビだよなあ、こいつら)」
それから俺は1年のサウスポーの球種を見定めることに夢中になってしまい、結局ほぼ一睡も出来ずに集合時間を迎えたのである。え?雷市?2時を回った時点で隣で爆睡しはじめたよ。ふざけんな。
睡眠不足
(あれ…渚クマ出来てるぞ)
(っ、誰のせいだと思って…!)
(???)
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