ラムネの瓶

 カランと音が鳴る。そういえば、この地に流れ着いてから飲んでいるような気がする。炭酸水に甘い味付けを施したヤツ。「サイダー」というとお酒を出されたことも懐かしい。あれはあれで、美味しかったけど。って、違う。やっぱり、ここに着てから飲んでいるような気がする。バーニッシュだった頃も、今も。数えていると、ゲーラが覗き込んでくる。
「今月はヤバくねぇぞ」
「まだな」
「そうじゃなくて」
 ゲーラの一言にメイスが付け足す。今数えたのは、それじゃない。指を折った回数を数える。多すぎて、往復をしたことくらいしか覚えてない。
「ラムネ、結構飲んでるなって」
「らむねだぁ? レモネードのことか?」
「れもねーど?」
「その瓶詰めのことじゃねぇのか。ラムネ玉があるだろう?」
「うん」
「あー、コッズ・ボトルか? いわれてみりゃぁ、珍しい」
「おかげで探す手間も省けるしな。わかりやすいし」
「ビー玉じゃないんだ」
「コッズワロップなるものもあったぞ」
「俺たちの時代にゃぁ、廃れちまったから、飲んだことはねぇけどな」
「そうなんだ」
 意外と物知りである。もしかしたら、酒のことに関してだろうけど。ラムネの瓶を、グッと上に向ける。カランと中のビー玉が鳴るだけで、ポツポツとラムネが垂れただけだった。
(割った方がマシかも)
 でも、片付けとかどうしよう。口を撫でていると、メイスが口を出す。
「割るなよ。ビールを入れてみるからな」
「ケッ、コッズワロップなるものの再現かよ。俺ぁ遠慮しておくぜ」
「ちゃんと洗ってから使うに決まっているだろう。ラムネの味が移る」
「けど、洗うのも苦労しそうだよ? それにビー玉で、少し入れにくそう」
「そこは、頭を使うんだ」
「完全に乾かすには、一晩使いそうだけどな」
「一日だろう。天日干しだ」
「で、乾くといいんだが」
「しかも一度きりの試飲のみ」
「夢があるじゃないか」
 意外とロマンチストだ。そう思いながら、ラムネの瓶をキッチンに置いた。


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