あの日産まれなかった光が泣く

 また「燃えたい」「燃やしたい」って炎が囁く。それを無視して、意識の下に封じ込めた。それでもまだ炎が強く囁く。我慢すればするほど、炎の意志も力も要求も、とても強まるように感じた。それでも我慢する。そう欲求に従って全てを末広がりに燃やしても、なんにもならなかったからだ。それは過去の出来事で、嫌というほど知っている。それは過去の出来事で、嫌というほど見せられた。ゲーラとメイスたちに違っては、その規模が小さいから別に、どうってことはなかったけど。
 今日も炎が「燃えたい」「もっと燃えたい」「燃やしたい」と囁く。強い光が一瞬で瞼を貫き、ドンッと背中を強く押された。ひどい衝動だ。それでも今日も我慢する。指先に一瞬の炎を灯して、そのままボンッ! 天井を貫く閃光を一瞬だけ上げさせて、そのまま消した。これ以上燃やさせない。通り過ぎるだけの欲求なら、一瞬だけの存在で充分だ。そういう遊びを続けていたせいか、ついにボスにバレてしまった。
「お前がやりたいというなら、口を出さない。けど、我慢のしすぎは毒だぞ」
 それをいうなら、ボスの方だ。いつも口を真一文字に引き締めて、難しい顔や硬い顔ばかりをする。それなら、ボスもたまには息抜きをしたらいいじゃん。
「いわれなくとも、しているつもりだ。そうじゃなくて」
「子どもたちと遊んだり、見守る以外でだよ? ちゃんと寝てる?」
「あのなぁ、ななし。僕はお前を心配して」
「知ってる」
「だったら、少しは炎の意志に従ったらどうなんだ? コントロールも大事だが、それでも」
「大丈夫。誘惑かどうかは、自分で決めるから」
「確かに、魅惑的にも思えるが、そうじゃないだろ」
 リオが一つ一つ、言葉を苦しそうに引き出す。段々とボスの顔が剥がれてきた。そんな、困らせるつもりはなかったのに。「ごめん」といいつつ、リオに伝える。
「まぁ、人より頑丈だから。その分、大丈夫」
「けど、ゲーラやメイスにも分けて貰っているって噂だぞ? ちゃんと燃やさないと、辛いんじゃないのか」
「それは」
 その、二人が勝手にやっていることだから、どういえばいいのか。「お互いの身体を燃やして、それで炎を分け合うこともできるんだぞ?」とリオが提案を持ちかける。集団で燃えて、炎の力を大きくする方法だ。同様に一方へ分散させて炎の力を一時的に譲渡することができる。言い方が悪い。相手の生命へ炎の力を分け与えるという感じだ。
(もしかして、こう強い力で燃やしてるのを見て、かな)
 だとしたら誤解である。別に、それで弱ってるわけじゃない。「大丈夫だよ」との一言だけ伝えた。それでもまだ、リオは引き下がらない。
「本当か?」
 その質問に、どう答えればいいか迷った。


<< top >>
人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -