陰陽の双児

 体が怠くて動けない。聞けば、寒暖差における風邪だという。今まで、そういうことなかったのに。「プロメアがいなくなったからだろ」とゲーラがいった。
「こういうのはな、油断したら引くものなんだぜ」
「ぐっ」
「まぁ、確かに最近は異常気象が過ぎたけどよ。寝りゃ治るだろ」
 薬飲んで寝ろ。とゲーラが人の頬を突きながらいう。流石というか、経験者としての含蓄があった。でも、薬より体に免疫作らせた方が早いと思う。ボーッとチェストに乗ってるものを見てたら、メイスが入ってきた。
「少しは良くなったか?」
「ぼちぼち」
「ってとこだな。薬はまだ飲めねぇしよ」
「まぁ、精のつくものを食べてからの方がいいしな」
 ほら、食え。とメイスがトレーを置いてきた。チキンスープと、一切れのパン。「食べれないかも」とパンを指したら「スープに浸けておけ」と返ってきた。
「ふやけて食べやすくなるからな」
「だとすりゃ、ミルクパン作った方が早くねぇか?」
「チキンスープの方がいい」
「だとよ」
 メイスがゲーラに目配りをした。それに「うっ」とゲーラが顔を赤くする。いったい、なんだろうか? 「二人が作ったの?」と聞けば「いや、病人に食べやすいようにコイツが教えてきた」とメイスが返してきた。
「お前の場合、弱いと胃もたれしやすいからな」
「だからそういうの、食べれないんだよね」
「ステーキが、だろ? だからコイツにしたじゃねぇか」
「ありがとう」
 素直に礼をいえば、ボッとゲーラが顔を赤くした。照れやすい男だなぁ。けど、他の人に感謝をいわれても、ここまで赤くしたことはなかったように思える。複雑な気分だ。スープを一口飲めば、濃い味がした。薄味じゃ、全然ない。
「出汁が、とても効いてるね」
「おう。これでも薄い方を選んだつもりだぜ?」
「おかげで、今日の晩飯はスープ祭りだ」
 うそ。それだとちょっと、申し訳なくなる。「ごめん」と謝れば「礼は治ってから弾んでもらうぜ」といわれた。
「なにそれ」
「お前が元気なさそうだったからだろう。なに、ただのジョークだ」
「そうなの?」
「おう。半分はな」
『半分』ってなんだ。どう聞き返せばわかるんだろう。と考えてたら、メイスも「半分か」と神妙な顔で繰り返した。
「だとしたら、俺たち二つで『ガチ』って意味に変わるな?」
「どういうことなの?」
「気にすんじゃねぇ。とにかく、食っとけ」
 千切ったパンを押し付けられて、とりあえず食べた。


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