回しのみ

 料理の番組を見るのは楽しい。この前入ってた極東の島国が遺した番組のフィルムではなく、普通に本国で放送されている番組を見る方が楽しい。各国の大家族の料理人を召喚して、チームプレイで料理を作る対決だ。
 テレビの中では畑から野菜かハーブを収穫している様子が映し出される。
「おっ。アレ、昔食ったヤツじゃねぇ?」
「ふむ、形は似ているようだな」
「そのまま食べれたっけ?」
 もうポップコーンに慣れ親しんだ我々にとって、飽食の前で過去を思い出すことは難しい。
 ゲーラの足に挟まれたポップコーンに手を伸ばす。口に放り込めば、しょっぱい味がした。弾けたトウモロコシの種の皮が、歯に挟まる。
「あれは、食べれるタイプのものだろう」
「水で洗ってるな」
「土とかが付いてるから……? 焼いたら萎びるし」
「あぁ、そうだったな。ついでに水も出る」
「洗ってねぇだろ」
「葉っぱでも水を含んでいるんだ」
 メイスがゲーラの質問に答える。そういえば、あの頃はどうやって喉の渇きを凌いでいたんだろう。テーブルに置いた水に手を伸ばし、蓋を外す。ペットボトルに口を付ければ、少し生温い味がした。
「誰か飲んだ?」
「いいや」
「飲んでねぇよ」
「そっかぁ」
 メイスとゲーラの返事に答え、水を戻す。テーブルには食べたポップコーンやポテチ、チュロスなどのゴミがある。
(これ、誰か片付けるんだろう)
 と思ってたら、メイスが人の水を手に取った。
「ちょっと」
「喉が渇いてるんだ」
「そうカッカッすんなよ。飲めばいいじゃねぇか」
「人のを取ったら?」
「回し飲みは別だろ」
 ほら、といってメイスは突き返す。別にそういうことでもないのに。ゲーラからコーラ、メイスから私の水を突き出されたまま、顔を歪めるしかできなかった。


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