痩せ我慢に半々

 今日の食糧は少ない。備蓄が少ない上に、今日の収穫も少ないのだ。総合的に、マイナスになる。幸いまだなにも入れなくても動けるので、食べたと嘘をついて食べてもらった。そうしなければ、食べてくれないのだ。
 ぐうぐう鳴りそうになるお腹を、炎を燃やして解消する。炎がある限り、我々の体は不滅だ。精神的な飢餓に対しては、木の根を噛むなどをして対処をすればいい。
 ガリガリと爪を噛んでいたら、後ろから封の曲がったスティック状の菓子が出てきた。お菓子ではなく、携帯食料だけど。渡した相手を見れば、ゲーラとメイスである。
「食えよ」
 ほら、といってアルミホイルに包まれたそれを頬にぶつけられる。ここまでされると、受け入れるしかない。そうでないと後が面倒だからだ。ゲーラに渡されたそれを受け取る。
 アルミホイルの封を開けて下に下ろせば、一本のスティック状の栄養補助食品が出た。それを一口だけ折って口に入れる。残りはゲーラたちに渡した。
「あ?」
「もういらない。お腹いっぱいだから」
「嘘つけ。足りないだろ」
 そういってメイスがもう一口折って渡してくる。これで二口目だ。押し付けられたそれを受け取ってると、ゲーラも折ろうとしてくる。
「もういらない」
「あ?」
「お腹いっぱいだからいらない。二人が食べたら?」
「だがお前は」
「ダイエットしてるから、いい」
 気にかける二人から顔を反らす。これで諦めてくれるかと思ったら、隣に座ってきた。ガッシリと両脇を固められる。
「ほーう。ダイエット、ねぇ」
「随分とガリガリのようだが?」
「二人に比べたらまだマシな方。痩せてる方が食べたらどうなの?」
「ななし。聞いたことあるか?」
 メイスがお手軽知恵袋を出してくる。
「女っていうヤツは、たくさん食べないとエネルギーを蓄えられないらしいぞ」
「つまり、男の俺らよりお前の方がたくさん食べなきゃならねぇってことだ」
「……なにそれ」
「つまり食えってことだよ」
「もう限界なんだろ?」
 そういってゲーラがもう半分折った分を渡してきた。誰も、頼んでないし。そういおうとしたら、既に二人とも残る半分を食べていた。
(言い返せない、し)
 こうなったら食べるしかない。『ダイエット』の名目で半々を分けられて押し付けられたそれを食べる。これ、累計で一本のような気がする。その一方で、二人は半分になった携帯栄養補助食品を、無言でモグモグと食べていたのであった。


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