交通整備の後ろを通りたくない

 ホットドッグからソーセージが零れる。これはヤバい。後ろにいるゲーラとメイスに合図をした。
「あ? んだよ」
「なにかあったのか」
 同じように歩き食いをしているゲーラとメイスが尋ねる。黙って指で角の向こうを指差す。私が油断せずにいるのを見て、そうっと二人は角から顔を出した。先と変わらず、元フリーズフォースの連中がいる。
「ゲッ! アイツらは……」
「あぁ。フリーズフォースの、親玉だな」
 メイスが静かにいう。そう、なんか耳を澄ますと掛け声で自分の名前をいう、ヴばるかん大佐とやらの人物だ。私たちが執行猶予を言い渡されてバーニングレスキュー隊に入って、しばらく復興作業に汗水垂らしていると、突然バーニングレスキュー隊の本部に現れたのだ。咄嗟にボスを引き連れて物影に隠れたのだけど、後で聞くところによると、ルチア女史とエリス博士に自分たちのギアの修復を頼んだようである。
 で、かち合わないように気を付けながら一緒に街の復興作業をして、落ち着いたら、これ。いつのまにか交通整備や巡回をメインとする警察の方に就職していた。お互い関わり合いにならないよう気を付けて生活をしていたが、まさかこんなところで鉢合わせすることになるとは……。
 物影からヴヴぁるかん大佐の様子を見ながら、ホットドッグを食べる。
「どうする?」
「どうするといわれてもな……」
「幸い、犠牲になってる仲間はいねぇようだしな」
 そう。あの大佐、なにを隠そう我々元バーニッシュを掴めては職務質問をすることが多いのだ! 以前と比べてそう横暴に権力を振りかざすことはなくなったが、あの体格差だ。でっかい人間に真上から圧をかけられるとどうしても苦しい。
 ポトッと頭になにか落ちたかと思うと、ゲーラの焼きそばパンにある麺だった。
「ちょっと。落とさないでよ!」
「あ? わりぃ」
「悪いとかじゃなくてさぁ」
「ゲーラ、今度からそれを入れた袋を捨てるな。しかし、あそこは俺らの通り道でもあるからな……」
 ここを通れないと回り道をすることとなる。メイスは袋に入れた状態で、アメリカンホットドッグを食べる。これも隠さずにいうと、ホットドッグの類は私とメイスで売り切れになった。結果、ゲーラだけが焼きそばパンの状態である。
 モグモグと昼飯を食べながら、ヴばる……大佐の行動を観察する。
「あそこから、動く気配がないね」
「あぁ……。代わりに光る棒みてぇなもんを動かしているようだが」
「あれは、誘導棒だな。武器には適さない。すぐに折れるぞ」
「確かに。折れそう」
「つまり、あの野郎、なにをしているんだ?」
「交通網の整備だろ。信号機の復旧はまだだしな」
「なのに車はくるんだ……」
「世知辛ぇ」
「近隣諸国から物資の援助は届くからな。まぁ、まだ少ないだけマシだろ」
「そういえば、マッドバーニッシュだった頃は車、あまり通ってなかったよね?」
「あっても蹴散らしてたからなぁ」
「良い燃えっぷりだったぞ」
「もうしないでね?」
 そもそも、今したらせっかくの市民権が牢獄へと格下げだ。そう思いながら、ばる……なんたら大佐の注意が向こうへ引かれたのを見つけた。
「くぉらぁ! そこを通るんじゃぁない!! 下手したら轢き殺されてペシャンコになるぞぉ!!」
「よっしゃ! 今の内に行けばいけるかも!?」
「おう! サッと向こうの建物まで走りゃぁ一発だな!!」
「あぁ! アイツの注意が向こうへ行ってる間に……!」
 ──バーニッシュサイクルを出してかっ飛ばせば間に合う──!! そう思って力んだのだけど、バイクは出なかったのだ。忘れていた、もうプロメアの力も使えなかったのだ……。
 円陣を組んだまま、三人して黙る。どうしよう、ボスが待っててくれるのに……。いやガロ青年宅で待機して貰ってるから、そこで開かれる極東の島国の遊びやらをするために、こうして買い出しに走ってるけど……。
 遠くでヴば……大佐の怒声が聞こえる。どうやら、横断歩道を無視して渡る人や子を叱っているようだ。
(しっかりとルールを守るなぁ)
 とはいえ、あの目の上にあるスカウターには嫌な思い出があるため、中々踏み出せないのであった。


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