深夜にマシュマロ(消火後)

 お腹が空いたのでマシュマロを食べていたら、ゲーラが起きてきた。もう深夜の三時を回っている。「生でチマチマ食べるより、焼いた方が美味ぇだろ」「でもトーストだと食べちゃう。駄目」「んなら串刺し」「焼けない」「コンロがあンだろ」「溶けちゃう。コンロべたべたになる」あぁいえば、こうで駄目。ゲーラが目を逸らして、ボリボリと後頭部を掻き始めた。万事休すだ。私はマシュマロを食べる。「だから、生より焼いた方が」「やっ。そこまで空いてない」というより、お腹がビックリするから駄目。そうやり取りを続けていたら、メイスも起きてきた。ジトリとこちらを見て、「なにをしているんだ、お前ら」の目。くるくると髪を巻いてお団子にしたあと、キッチンに入ってきた。ゲーラの「焼いた方が良いに決まってるよなぁ? メイス」の言葉を聞いてから、私の手にあるマシュマロを見る。ジッとマシュマロを見つめること、暫し。メイスがカチャカチャとマグカップを出してきた。私と、ゲーラとメイス。三人分だ。それに牛乳を入れ、電子レンジで同時に温める。その間にココアを用意し、温め終えた牛乳にそれぞれ入れ始めた。クルクルとココアを入れたスプーンで、それぞれ掻き混ぜる。一定の感じになったら、どぼどぼとマシュマロを入れ始めた。
「共犯だな」
 そういって、出来上がったココアを渡してくる。なんか、バーニッシュだった頃に聞き覚えのある言葉だ。「確かに調理しているが」チラッとゲーラが、こっちを見てくる。「お前は、これでいいのかよ?」確認を取ってきた。別に不満はない。ココアは飲み物だし、マシュマロも溶けて食べれるからだ。
 三人してソファに座って、サブスクの配信を見る。画面に流れるのは、一つの映画だ。急に現れたトッペルゲンガーに家族が襲われるという内容で、中身がどんでん返しになっている。(初めてちゃんと見たけど)冒頭から、ちゃんと伏線が張ってある。
 メイスは、くぁっと大きな欠伸をしながら、目を閉じてココアを飲んでいる。ゲーラは、目をしばしばさせながらココアを飲んでいた。あ、目を閉じる時間の方が長い。私も眠いけど、どうにか映画の方に集中した。(なんか)最初から通しで見ていた分、見返して楽しめるところが多い。(最初見ただけだと、わかんないところが多かっただろうな)それはきっと、見ていない全員にいえると思う。
「ねっみぃ」
「次の期限が切れるまで、あと」
「二ヶ月」
「そう、それだ」
「いっそのこと、もうランク上の値段で買うか? 一々買うのも面倒だろ」
「いや。なにかしらが起こる可能性がある。なにせ、脆弱だからな」
「ハッキングでアカウント強奪?」
「そう、それだ」
「よくそこまでスラスラいえたな。そういうの、最近読んだのかよ?」
「うん。流れてきた」
「なににだよ」
「ネットニュース。頑張って読んでみた」
「そうか、偉いぞ」
「テメーはなに褒めてンだ」
「褒めて伸ばすのが基本だろう。罰ばかりでは恐縮して育たなくなる」
「そうだけどよ。チッ、ムカつく詐欺を思い出したぜ」
「そういうのもあるよな」
「なにが?」
「ンなの引っ掛かる前に追い出すから問題ねぇよ」
「知らなくていいことだ。それにしても、眠い」
「そりゃ、夜の三時だからな」
「バーニッシュだった頃は、あんなに交替で見張りして寝てたのに」
「野宿と我が家は違うンだよ。外敵に襲われる心配もねーしな」
「それと暖かい部屋と柔らかいベッドもある。雑魚寝とは、わけが違うだろう」
「そっか。地面硬いと身体ゴリゴリ痛い」
「必要に迫られちゃ、できるけどよ。やっぱ、柔らかいふかふかのベッドが一番だよな」
「あぁ。もう人間の生活に戻った以上、人間の生活で居続けたい」
「なにが? 人間、って、人並みの生活?」
「もっと他にも、色々と意味はあるぜ」
「まっ、お前にはもう少し理解するのに時間がかかるか」
 そういって、メイスがグッとココアを飲む。ゲーラのは、なんかマシュマロだけが、やけに減ってる。絶対、マシュマロだけ先に食べた。
 と思いつつ、私もココアを飲む。マシュマロは溶けて甘いし、ココアもココアだけよりさらに甘くなってる。砂糖五杯分の甘さだ。(うぇ)マシュマロだけで食べていたときよりも、さらに甘い。
「どうして甘い」
「そりゃ、マシュマロだからだろ」
「熱分解」
 そう一言で説明をされても、ちんぷんかんぷんだった。


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