アドベントカレンダーを作る(消火後)

「ちょっと遅いけど、アドベントカレンダーを作ろうぜ」
 ある日ゲーラが、唐突に言い出した。『カレンダー』の単語に釣られて、壁に掛かってあるカレンダーを見る。今日は『十二月一日』だ。この日に作られたものを、ちょっと遅いというのだろうか? 首を傾げていると、メイスが同意している。「アドベントカレンダーか。いいな」ゲーラのいった言葉を反芻して、考え込んでいる。「あどべんと?」わからなくて聞き返したら、ゲーラがキョトンとした。
「なんだ、知らねぇのか? アドベントカレンダーだよ。あどべんと、かれんだぁ」
「クリスマスの日数分だけ棚や窓があって、そこに小さな贈り物を入れるカレンダーなわけだが──、本当に知らないのか?」
「知らない」
 メイスも信じられない、といったようなので、正直に白状する。「そうか」とメイスは頷いたけど「マジかよ」とゲーラは飲み込めないようだ。「毎日一個ずつ開けて、中からクッキーとか取り出さなかったか?」そう聞かれても、覚えのないものはない。「聞いたこともない」見聞にないといえば、ますますゲーラが信じられないような顔をする。
「マジかよ。おいおい、全部食べようとして親に怒られたってことも?」
「ケーキじゃないの?」
「ケーキはクリスマス当日だ。イブじゃなくてな。俺はこっそりと食べて、別の菓子を入れて誤魔化してたな」
「誤魔化したのかよ」
「あぁ。チョコレートの代わりにガムとかな」
「ガム」
「俺しか開けなかったからな。当然、親にはバレない」
「親が見てたのと全然違うな。っつーことで、作ろうぜ」
「なんで?」
「毎日飲む酒とかツマミとかを変えれるだろ?」
「お酒も入れれるんだ」
「それだと箱自体が大きくならないか?」
「だと思って、元マッドバーニッシュの面子から貰ってきたぜ。ビールの空き箱!」
「でっかい!」
「そうだとしても、瓶の口が出てしまうだろう。どうするんだ? ゲーラ」
「そんときゃ、他の箱を繋ぎ合わせりゃ済むだろ。まっ、七五〇くらいだったら、まだなんとか」
「二四本も買うの?」
「ぐっ!」
「流石に多すぎるだろう。しかも一日一本限定だぞ? ツマミを入れて誤魔化すしかないか」
「あのなぁ! そんときゃぁ、こう。なんとかするんだよ」
「あやふやだな。すごく」
「あっ、じゃぁそれぞれ交替ずつ入れたいもの入れたら? 二十四で、ちょうど一人八回入れれるし」
「おっ、いいな。ちょうどイブに終わる」
「入れるっつっても、一品までだからな? 全部同じ、なんて馬鹿な真似するなよ?」
「しないよ」
「それはそれで面白そうだからな」
「おい。やったら張っ倒すからな!?」
「おぉ、怖い。怖い。三連続同じなのは、逆に面白くないか?」
「やるの?」
「ほら見ろ。ななしも混乱してるじゃねぇか。つまんねぇこといってんじゃねぇぞ!」
「意外と面白いと思うんだがな。なら、今日中に買いに行くか」
「おう。今日だけはそれぞれ別行動だな」
「入れる箱はどうするの?」
「あっ」
 ゲーラが声を出して固まる。箱は持ってきたものの、作るところまで考えてなかったようだ。黙るメイスが少しして、喋った。
「ワインを入れる箱を二十四枚買って、そこに日付を貼って簡単に済ませておくか」
「おっ! それがいいじゃねぇか!! 流石メイスだぜ!」
「フフンッ。もっと褒めていいんだぜ?」
「調子に乗るんじゃねぇぞ! この参謀!!」
「じゃぁ、私、それ買う!」
「場所がわかるのか?」
 野次ったゲーラに釣られてやりたいことを伝えると、メイスのテンションが下がる。一気に冷静に戻ったようだ。「わかんない」「だろうと思ったぜ」「じゃぁ、時間を決めて待ち合わせるか」ゲーラが溜息を吐いて、メイスが計画の変更を伝える。どうやら、別行動になるのは数時間か一時間くらいの限定的になりそうだ。スッとスマホを取り出して、近隣の買えるところを探した。
「あまり遠くを選ぶんじゃねぇぞ」
「わかってる」
「初めてのお使いだな。ちゃんと乗り降りできるか?」
「できるってば」
「迷子になったら、ちゃんと電話しろよ」
「バイクを飛ばして迎えに来てやるからな」
「なんか、そのまま待ち合わせになりそう」
 そう予測を伝えたら、なにもいってくれなかった。「んじゃ、あとで連絡するぜ」「わかった。出掛ける準備をするか」そういって、外に出る準備を始める。まぁ、ゲーラが連絡するのは時間が近付いてからになるだろう。気になるお店もあるし、ついでにそこへ行ってみようかな。とりあえず温かい動きやすい服に着替えて、お金も財布に。あっ、『でんしけっさい』でできるんだっけ? ポチポチとスマホを触って確認する。
「お前、IC決済の登録はしてあるのか?」
「え、なにそれ?」
「あぁ、いつも現金を持ち歩いていたから知らんか。メトロポリスカードでも決済できる」
「どういうこと?」
 なんかそれを色々と教えてもらったりなんかして、時間が伸びた。


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