ジャパン特集コーナー(消火後)

 プロメポリス某所、とあるデパートにて。ゲーラとメイス、ななしの三人がいた。「あのトサカ野郎が好みそうなラインナップだな」「もう来ているかもしれんぞ?」「どこかで鉢合わせたりとか?」したりするのだろうか、とななしは言葉を省略する。紙の細工もあれば、布もある。流石に着物はないが、木製の容器などはあった。「元々、技術の高い国だが」そういいつつ、メイスが視線を移す。見れば金属コーナーだ。職人が小槌を振るって作った一級品ばかりが揃う。「手製な分、値段が高いと聞く」「そりゃぁ、手間暇かかってるからだろ」「あっ」正論を吐いたゲーラの横で、ななしがなにかに気付いた。「ねぇ、これ」あるものを指差す。「あ?」「なになに?」それに好奇心を擽られて覗き込めば「おっ」と興味をそそられた。しかしながら、値段が高い。バーニッシュの象徴である炎を表す『炎』に、リオの斬撃を表す『斬』それら漢字が組み合わされ、一つの単語として刻印されてあった。刃物の背に刻まれていることもあって、粋である。「クソッ! すげぇクールだってぇのに」「ボスを表し、クッ! 高い!!」どう足掻いても懐を圧迫する。今月の赤字を飛び越えるのは必須だ。悩む二人の横で、ななしは首を傾げる。「ブッシュクラフトに、良いって」Bush≠フ字に見当が付かない。craft≠ヘわかるが、なにを作るというのか。ななしと同様、ゲーラもメイスも想像が付かない。何故なら、日常の一部ではないからだ。Bush≠フ指す単語自体、未知の分野である。それに、バーニッシュだった頃は炎でどうにでもやれた。今は人類の文化を享受している身であるから、自然と溶け込む術を持たなかった。
「見送る、しかねぇのか?」
「あぁ、高すぎる。とてもじゃないが、キツイな」
「買わないの?」
「値段が釣り合わねぇ」
「またの機会に買うとしよう」
「ふぅん」
(またの機会なんて、あるのかな?)
 ふと思う。しかしながら、わざわざ遥か遠い海を乗り越えて運んできた物品だ。この手間を考えると、二度とお目にかからない。少なくとも、プロメポリスにいる限りはないだろう。メイスは考える。ゲーラは口惜しそうに、当のナイフを見た。
「くっそぉ。クールでスタイリッシュな漢字だってぇのに。もう少し、早く出会ってりゃなぁ」
「もう少し早くって、どのくらい?」
「バーニッシュだった頃」
「強盗か。犯罪だろ、それ」
「それほど欲しいって例えだよ、例え。実際にはやらねぇよ」
「ツケ払い」
「ローン支払いは地獄だぜ?」
「リボ払いもな」
 ゲーラはななしを直視し、メイスはそっと目を逸らす。『炎斬』と刻印したジャパン産の刃物を見る。切れ味は鋭そうだ。詳細な産地の場所を見て、ななしは遠い国に思いを馳せた。


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