ディップ(消火後)

 プロメポリスの地下鉄へ入る階段みたいなヤツ。その横に、小さな長方形の箱を模した店がある。『ボデガ』だ。たまに珍しいものを発掘することができる。今回はディル・ピクルス味のポテチだ。正直、セロリとピクルスの味は、あまり好きじゃない。サワークリームの方がまだ好きだ。ゲーラとメイスがそれを買う。「誰かのお土産?」二人がそれを食べているところなんて、見たことがない。「あー、まぁな」「交渉の道具、というわけだ」「ふぅん」碌なことじゃないだろうな。ここまで用意するということは。すぐにそれをカウンターに置く。ついかでバナナを買った。甘い方じゃない。食事のおかずに使うヤツで、加熱する方。「チョコレート買うか?」「スナック菓子もあるぞ」「アレがいい」ゲーラとメイスが聞いてきたから、目に付いたヤツを買う。二人がお金を払った。あっ、サワークリーム味のポテトチップスが食べたくなった。二人に強請って、デリへ寄ってもらう。寄り道に付き合ってもらった代償は、いうまでもない。
 ちゅっ、ちゅっとキスをする。付き合ってもらった代償は、これだった。二人の肩を掴みながら、薄く閉じた唇に自分のを合わせる。何もしてこないし、それが条件だ。ゲーラが終われば、次はメイス。メイスが終われば、次はゲーラ。二人が満足するまで放してくれない。ようやく終わりを告げられたのが、頭を掴まれたときだった。好きなようにキスをされて、解放される。フラフラとメイスにも同じことをすると、同じことをされた。ようやく解放される。ボーッとしていたら、二人が買ってきたものに手を着けていることに気付いた。
 サワークリーム味のポテトチップスはもう食べられていて、キスチョコの封が開けられている。「それ、私の」といったら、キスチョコの中を押し付けられる。カカオの甘さだ。あ、と口を開けるとメイスが指で押してくる。「元はといえば、こっちが買ったモンだろ」とゲーラが正論を話した。モグモグとチョコを食べる。それでも、やっぱり食べたいものは食べたい。ゲーラの手にあるポテトチップスに、手を伸ばした。瞬間、手を掴まれて引っ張られる。
「固形のまま食べたい」
「味は同じだろ」
「食感が違う」
「じゃぁ、チョコはどうだ」
 変なところで参戦しないでほしい。後ろからにじり寄る気配に、逃げ場がなくなる。横に動くことができない。(なんで)二人がしっかりと、身体を固定してきた。お菓子がテーブルの上に置かれる。(あっ、サワークリーム。まだ食べてないのに)惜しむ間もなく、食べられた。


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