さよなら故郷

 壊滅した。
 私たちのいたグループは壊滅したのである。ゲーラとメイスの二人で遠出をしたときに、政府の奴らがやってきて、その場にいた皆を捕らえて去ったのである。よって、私たちと、同じように運よくその場にいなかったか見つからなかった連中だけが、生き残ったのである。
 パチパチと燃える火を囲む。ゲーラの作った炎だ。掻き集めた火種を飲み込んで、火の勢いを強める。
「クソッ」
 また地面に拳を叩きつける。暇があればそれである。暇があれば、思い出してしまうんだろう。もし早くに戻ることができたのなら、もっと早くに戻ることができたのなら、そのときヤツらを跳ね除ける力があったのなら。そんな後悔でいっぱいなのだろう。私もそうだけど。
 メイスは、ボーッと火を見たまま、なにもいわない。立てた膝に腕をかけて、そこに口を隠す。なんか、考え事をしているんだろう。
(でも、それをいわないということは)
 確実に、私たちにとって悪い知らせでしかないことだ。私だって、今考えてることを口にしてしまえば、最悪の方に転がることを知っている。でもゲーラは口にした。
「こんなところで燻ってる場合じゃねぇ! すぐに助けに向かうぞ!!」
「待て、ゲーラ。落ち着け」
「落ち着いていられるか!」
「待ってよ」
 釣られて私も口を開く。
「場所は、わかってるの?」
「それは今から探す!」
「やるにしてもどこから攻める。持久戦はできる状況か?」
「できっ……、クッ!」
 ゲーラが口を噤む。私たちだけじゃない。残る仲間の状況を見て、判断したのだ。皆疲れている。戦意もない。今から立ち向かうにしても、色々と足りない。
「長期的にやるには拠点が必要だろう。それに移動しながらにしても、それに適した準備がある」
「だ、だからといって、アイツらを見捨てられるかっ!」
「だが俺らも捕まってどうする? そうなりゃ水の泡だ。悔しいが、ここは一旦態勢を立て直した方がいい」
「……クソッ!」
 腹癒せに、ゲーラが壁を殴った。パラパラと土埃が落ちる。生き残った仲間が起きる気配はない。「どうやって場所突き止める?」といおうとした言葉を飲み込む。不確実性の強い言葉を、口に出すことはできない。現に、突き止めるために政府の連中を捕獲しようとしても、対象を絞らなければ意味がない。
(無差別殺人だ)
 それだけは避けたい。難しい顔でウンウンと唸ってたら、ゲーラが自分の膝を叩いていた。
「おい、ななし。お前も寝とけ」
「や、まだ起きてられるし。見張りもできるから」
「見張りくらい俺たちでもできる。さっさと寝ろ。体に響くぞ」
「うぅ」
「あー、適当な頃合いになったら起こしてやるからよ、寝ろ」
「わかった」
 とりあえず体を丸める。固い地面に横になっていると、遠くで二人の話し声が聞こえた。「強襲をかけるか」「いや奇襲がいいだろう」「この辺りを巡回する連中の話は聞いたか?」……などなど。なんというか、物騒な会話だけだ。
(無茶は、しないでほしい)
 そう思いながら、短時間だけ脳と体を休める仮眠に落ちた。


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