雑談（本編前）

「そういえば、今日は『ヒナマツリ』というらしいな」
「はぁ？　ヒマナッツだぁ？」
「食べれるの？」
「ナッツじゃないぞ」
　どうやら、といってメイスが指を立てる。「極東の島国だと、人形を飾るのらしい」と説明を加えた。
「そこで、女の子の幸せを願うんだとさ」
「ふぅん。で、それを作るっつー話か？」
「炎で作ればいい感じかな？」
「話が早い。とはいっても、ただの人形ではなさそうだが」
　といいつつ、顎に指をかける。なにやら思うところがあるらしい。その考えている横で、ゲーラが勝手に作り出した。手の平に炎を集めるよう集中し、その中で炎を圧縮させる。蛍光ピンクと緑の織り成す炎が、中央に向かって渦を巻き始めた。ドロリと紫黒のマグマが漏れ始める。それを逃さぬようギュッと圧縮し、形を作り始める。ななしが眺めると、不格好な人形ができた。原始人が泥で捏ね繰り回した、等身の低いものだ。出来上がったそれを、マジマジとゲーラが眺める。
「こんなモンか？」
「よくないだろ」
　メイスのツッコミがさく裂した。