旨い脂

「馬鹿か?」
「馬鹿だな」
「あぁ、うるさい」
 奮発して買ったのに。調子に乗って焼いたら、食べられなくなった。胸から喉の辺りが、なんかムカムカする。ゲーラとメイスが残りを食べた。
「あー、美味ぇ」
「タダ飯ほど美味い飯はないな」
「うるさい」
 見栄えはよかったのに。白いお皿になだらかな丘を作って、ソースをかけて食べる。最初は順調だった。「これぞ高いお肉!」だったのに。どうしてこうなったんだろう。目の前で、みるみる内に減る。
「作り慣れてねぇ証拠だな」
「そういってやるな。放浪生活が長かったんだろう」
「そっちもじゃん」
「俺ぁ、ちゃんと自制できらぁ」
「お前みたいに、考えなしに焼かないからな」
「うぅ。男だからって、バカにしてぇ」
「女だろ。オメェ」
「だな」
「うぅ」
 あぁいえば、こういう。二人のやり取りは終わらない。胸の辺りのムカムカが、なんかキツくなってきた。
「死にそう」
「胸焼けだな」
「だな。柑橘類でも食べておけ」
「レモン?」
「その辺りだろうなぁ」
「あったか? そんなの」
 冷蔵庫を開ければ、パインジュースがあった。「あった」まぁいっか、飲んでも。グラスを三つ取り出し、パインジュースと一緒にテーブルに置く。ゲーラとメイスにグラスを渡し、自分の分を注ぐ。
「お、サンキュー」
「助かる、って。自分の分しか入れないのか」
「ダメ?」
「ダメじゃないが」
「入れてほしいんだろ。ほれ、こっち寄越せ」
「ん」
 ゲーラが手を伸ばすから、パインジュースを渡す。なんか、脂を分解する効果があるからか、さっきより楽になった。ゴクゴクと飲む。ゲーラを見るメイスの目が、なんか怖い。睨んでいる。
「お前もだろ」
「るっせぇ」
 とくとくと、ジュースがグラスに流れた。


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