【R-12】イライラ苛立ち(メイス)

 深く息を吸って、紫煙を鼻から吐き出す。目を付けていた銘柄を吸っても、特に気分は貼れない。寧ろ不快さを増すだけだ。新品の箱は空になり、中身は吸い殻となって灰皿に積み上がる。最後の一本が、短くなって墓を一つ立てた。ヤニで紛らわせることはできない。メイスは深く、背凭れに沈んだ。
「あれ、メイス? 珍しい」
 一緒じゃないんだ、と心外な顔にメイスの苛立ちが増す。スンと鼻が近付き、至近距離でななしの顔が歪む。「煙草臭い」その歪んだ顔に、ブチッと血管が切れかけた。ななしの首を掴み、無理矢理引き寄せる。「んう!?」と驚いた口ごと噛み、舌を吸い寄せた。無理な体勢のおかげで、ななしは上手く動けない。ソファが邪魔になった。ななしの後頭部を掴み、起き上がる。ソファの後ろから座席へ移動させようとする。無茶な力をかけたせいで、ソファが倒れそうになった。
「んっ、む。ちょっと」
「ふぅ、なんだ」
「そんな気分じゃない。それに」
 カタンと傾いたソファが戻る。
「ソファが倒れそう」
「それはそれで、面白そうじゃないか」
「本気でいってるの?」
「本気さ」
「うそ」
 動転したななしの顔色で気分が良くなる。無理矢理自分の方へ移動させた。リードのように首を引っ張り、ななしをソファへ座らせる。背凭れがあるため、片足は床に落ちる。自分へ正面を向かせると、いきなり腰を掴んだ。
「ちょっと」
 嫌がるななしの手が腕を叩く。まるでゲーラのようだ。「ゲーラみたいなことをしないで」そうななしの口から出た途端、またメイスの不快値が上昇した。ブチッと血管がまた太くなり、ななしを自分の上へ座らせる。腰と腰を上下に重ね合わせると、ビクッとななしの体が震えた。「だから、そういう気分じゃないって」ぐいぐいと肩を押すななしの腕を無理に縮める。今はとにかく、他の男の名前を聞きたくなかった。
 メイスはななしの抵抗を封じて、腹癒せに抱いた。前にも挿れ、後ろにも指を挿れる。まだ準備をしていないせいか、ななしが泣きそうな顔で首を横に振った。
 挿れるのをやめる。入り口だけを撫でると、本人の許可なしに前へ挿入を始めた。


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