ゲーラの目

 ふと、暇で暇で仕方なくて。ゲーラの顔を見つめていたら、ゲーラの目が赤っぽいことに気付いた。
(黒茶じゃないんだ)
 てっきり、暗い色だと思ってたのに。意外と本人は明るい瞳の色をしていた。恐らく、瞳孔が小さいせいもあるんだろう。そんなことをボーッと考えていたら、ゲーラが気付く。なんで顔を赤くしたんだろう。
「んだよ、人の顔をジロジロ見て。なんか付いてんのかよ?」
「や、べつに」
 強いていえば、目と鼻と口が付いている──なんてことをいおうとしたが、言葉が思いつかない。"eye"、"nose"、"mouth"。それらを一繋ぎにする文章の中央が、思い付かない。ボーッと顔を見つめていたら、またゲーラの顔が赤くなった。今度は口をヘの字に曲げている。
「み、見るんじゃねぇよ。恥ずかしいだろうが」
「恥ずかしいの?」
「あー、だから見るんじゃねぇって」
 聞き返したら、片手で目を覆われる。おかげで、見えるのは赤黒い暗闇だけだ。ゲーラの手である。「ゲーラ」と呼んでも、反応はない。ただ「あー、クソッ」と呻く声が聞こえるだけだ。そんなに、オウム返しで聞いたことが癪に障ったのだろうか?
「ごめん」
「なっ、謝ることじゃねぇだろ!?」
「だって、なんか気に障ったことをしたかなって」
 思って、といいきる前に、ゲーラの手が離れる。ボッと熱が離れる。視界の下の方から、元の景色が見れた。ゲーラの足が見える。フッと視界が完全に開いたら、グッと顔を持ち上げられた。というか、挟まれる。
「見てぇんだろ? だったら、飽きるまで見てろ」
「あ、うん。主に目の方を見ていたいんだけど」
 そういったら、ボッとゲーラの顔が赤くなった。今度はとても赤い。肌色の面積はないし、きっと旋毛まで肌が真っ赤に色付いている。そうか、だから気付かなかったんだ。ゲーラの顔も赤いし、髪も赤くてもっさもさ。だから、瞳の色が埋もれたんだろう。赤茶っぽい瞳が、大きくなったり小さくなったりを繰り返している。
「これ、誰が気付いたんだろう。ゲーラの色。ゲーラの目って、赤っぽいね」
「ん、なの。テメェだけだろうがよ」
 ゲーラの口が震える。そんなことをいう声も、震えていた。フッと伸縮を繰り返す瞳から離れる。ゲーラの肩も、震えていた。
(なにこれ)
 私の顔を挟んだゲーラの手も降りて、私の肩を掴み始める。そのまま、お互い見つめ合った状態で暇な時間を過ごした。


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