コゲコメ生命体に家を与える

 買ったシルバニアファミリーの家に見向きもせず、使える家具だけを出す。ベッドにタンス、テーブルと椅子まで。まるで強盗だ。テーブルの一角を陣取ると、自分たちの住み家を作り始める。あ、それハンカチ。私の。器用に一枚と二枚に切り取ると、それぞれ屋根とカーテンの部分に活用を始めた。ここをキャンプ地とする! である。実際にバーンッ!! と手を挙げてみせてきた。そんな二匹の様子に、ハイハイとだけ頷く。なんか、お腹が空いてきたな。クッキーを取り出し、一口齧る。すると、ゲーラもメイスも欲しがってきたので、新しい一枚をドンと置いておいた。ティッシュを広げて、一枚。すると二匹が群がった。パクパクと食べ始めてる
「なんか、やりにくいな」
 小人の様子を見に来たゲーラがいう。自分の姿を模した小人が、こんなことをしてるからだろうか? 所在なさげに顎を撫でながら、ジッとゲーラの小人を見ている。
「いつまで居座るつもりだ」
 その隣でメイスもいう。なんか、恨みつらみが詰まっているように聞こえた。なんかあったのだろうか? そういう二人を見ながら、二匹の様子を見る。本物がここにいるというのに、二匹は見向きもしない。私の視線に気付くと「ゲ?」「メ?」と鳴きながら首を傾げるだけだ。なんか、可愛い。二匹の頭をそれぞれ、小突いて撫でてみる。
「いてっ」
「おい、撫でるな」
「ごめん。でも、つい」
「つい、じゃねぇよ。なんか、こう。て、て」
「『て』?」
「照れくさいというか、恥ずかしいという感じだな。どうせ」
 ズッとメイスが近付いてくる。長い髪が横に落ちたなと思ったら「オイ!」とゲーラが叫んだ。グッとメイスが遠ざかる。まるでメトロノームみたいだな、おい。ついゲーラの口調が移ってしまった。
「ヤるときは瓶詰にするか」
「蓋を忘れんなよ。捕まえるときが、大変そうだが」
「えっ、なんで蓋? 瓶から逃げる練習とかじゃないの?」
「ちげぇよ。なんつうか、その。ムードってモンがあんだろ?」
「うっ? え、む?」
「ムード、だ」
「ゲーラ。言葉でいっても伝わらないだろう。こういうとき」
 グッと顎を掴まれると、ゲーラとメイスの小人がギャアギャアと騒ぐ。激しく飛び跳ねて、ボッと火を噴き出した。
「こうなるってことだ」
「なるほど。ボヤ騒ぎになっちゃう」
「そうじゃねぇだろ。クソッ」
「動きを封じるために、瓶詰だ。脱走のな」
 頭を抱えて蹲るゲーラとは反対に、メイスは淡々と策を練る。いったい、なにを話題にしているのかわからない。けど、二人にとっては重要なことなんだろう。小人を見る。ゲーラは膝を着いてバッと両手を広げて、メイスは硬質化炎で作ったバラを差し出していた。私に。なにかわからないけど、受け取る。ギュッと人差し指をゲーラが抱き締め、頬を擦り寄せる。メイスの作ったのは、精巧だ。それを眺めていると、ジトっとした視線が二つあることに気付く。振り向けば、私を見る二人の姿があった。
「なぁ。アレって」
「あぁ。そういうことだろうな」
 珍しく、ゲーラが訛ってない。そう思いながら、綿密な計画を立てる二人を眺める。小人の様子を見ると、まだ私の指にしがみ付いている。人差し指にゲーラ、親指にメイスだ。離れると甲高く泣き喚くので、動くことができない。
(どうしよう)
 と思ってると、ヒョイッと二匹の首根っこが掴まれる。ゲーラだ。激しく抵抗をする小人の全身発火に「アチチ!」といいながら、瓶に入れる。ポトッと入れ終えると、すかさずメイスが蓋をした。
「ねぇ、空気孔って? どう出せ」
「オメェはコッチだろ」
「そろそろ、お盛んなことをしようじゃないか」
「え」
 腕を引っ張られ、顎を撫でられる。ポスンとベッドに落ちてから、二人が圧し掛かる。散々人の中に出し終えると、ようやく解放をした。
 体がとても重くて、下半身が震える。枕にしがみついて瓶の方を見ると、いつのまにか小人がいなくなっていた。内側に煤を残して、蓋はあのまま。いったい、いつのまに消えたんだろう。
「欲求不満になると、現れるってことかね」
「その線も厚いだろうな」
 そんなことを話しながら、二人は煙草を吸う。散々、こんなことをさせておいて。呑気な。ジト目で睨むと「いいぜ、受けて立つぜ」「もう一戦、するか」とコメントをしてくる。
(いったい、なにを)
 いっているのだろうか、と思うともう大きくなっている。それに体が、勝手に反応をした。


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