変な悪い夢を見た

 ガバッと体が起きる。混乱がまだ消えないまま、駆け足でリビングに向かった。
「おっ。今日は早いな、お寝坊さん。リオが一番か」
 そういってフライパンとフライ返しを手にするメイスは、両手がある。ガッシリと付け根から両腕が生えていた。それをガッシリ手に取る。
「どうした。悪い夢でも見たか?」
「ある。メイス、腕を切り落とされたりとか、ある?」
「はぁ?」
「あー、ねみぃ。んぁ? ななし、いったい変な顔をしてどうした?」
「ゲーラ。え、寮とか部屋の話は?」
「はぁ?」
 ゲーラもメイスともに変な顔をして聞き返す。よかった、あれは夢だったようだ。「変にリアリティのある夢だった」とボヤくと、フッと笑われたような気がした。ゲーラに至っては、首を傾げて「ははーん」と笑うような顔をしている。
「悪い夢だったんだろうよ」
「まぁだ寝惚けてんのかよ。どうする? 気付けの一杯でもやるか?」
「いらないよ。朝からお酒なんて。ロシア人でもあるまいし」
「ロシアだったら、ロシアンティーがお馴染みだろう」
「というか、そこまで寒くはねぇだろうが。ここはよ。どんな夢だったんだ?」
「おい、ゲーラ」
「えっと、メイスの傷口がやけにリアルで包帯巻いてた。あと、片腕だけ焼かれて傷口塞がってた」
「ほーう」
「おい。俺を見るな」
「腕くっ付けられなくて残念だったし、両腕も見つからなくて悲しかった」
「なるほどねぇ。だとよ、メイス」
「クッ。残念ながら、現実の俺は見ての通り、五体満足なんでね。そう気にする必要はないさ」
「だからちょっと一狩り行ってきて荒稼ぎしてきた。ついでにゲーラには一緒にピクニック行こうって聞いて断られた」
「プッ」
「テメッ、笑うな! メイス!!」
「いや、それにしても夢で良かったなぁ」
 やけに包帯の巻き方もリアルだったし、髪が落ちるのもリアルだったし。本当、ちょっと現実かと思った。
「夢でよかった」
「ところで、ウィンナー食うか?」
「食べる」
「俺にもくれよ」
「お前の分はない。朝食まで待て」
「依怙贔屓だぞテメェ!!」
「だったら今すぐ離れろ。ゲーラ」
 頭上で始まる喧嘩を見ながら、ウィンナーをもう一本食べた。


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