風船ガム(メイス)

 風船ガムで風船を作るのは諦めた。そもそも材料が足りない。そう思って無心でガムを噛んでいたら、隣でメイスが膨らませていた。
「なんで?」
「は? 風船ガムとあるからだろう」
 と当たり前のようにいうけど、そうじゃない。なんだって私の周りには、こう。悔しくて、もう一度風船ガムに挑戦してみた。舌で伸ばす。空気を入れる。けれども全然膨らまない。
「ぐぐぐ」
「あー、舌を出すな。口の中で伸ばすんだ。こう」
「それができないから苦戦してるんじゃない」
 つい反抗的な態度を取ってしまった。けど、何度やっても失敗するのだ。また同じこといわれたら、イラッとしてしまう。もう一度舌で伸ばしても、中々伸びない。固まった。嫌になってガムを取り出した。
「もう。これだからチューインガムってヤツは」
「まぁ、元は空腹を紛らわせるためのものでもあるからな。遊び心が味やこの点にしか出せないのだろう」
「ふぅん」
 そういったら、メイスもガムを出した。ゴミ箱に捨てる。ついでに私のも一緒に捨ててくれた。
「ところで、口が物寂しくないか?」
「別に、私は、そうじゃない」
「俺は物寂しい」
 クイッと顎を持ち上げられる。メイスの顔がくっ付く寸前で「いいだろう?」と尋ねられた。「よくない」と返す。そんなに禁煙で寂しいなら、飴を舐めればいいのに。
「飴なら、買ってくればあると思うよ」
「飴はお前だろう」
 そうわからない屁理屈をいって、メイスが近付いてきた。


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