風船ガム(ゲーラ)

 風船ガムが上手く膨らませられない。噛んで噛んで膜を広げて、舌で薄く伸ばす。そこから空気を送るのだけど、どうにも空いてしまう。
「ヘタクソ」
「うるさい」
「コツがいるんだよ、コツが」
 そういって、ゲーラが風船ガムを何粒が口に入れた。元々の一粒は小さい。それも子どものサイズを意識して作られたからだ。大人だと、全部食べないと足りない。プクッと、閉じたゲーラの口から風船が出てきた。
「おぉ」
「もう少しありゃぁ、膨らませられるんだけどよ。口から出さないのがコツだぜ」
「出さない」
「そう、舌を出さずに口の中でやるってことだよ」
 いわれて舌を戻す。口の中でもう一度噛んで、捏ね直す。ゲーラの言う通り口の中で舌へ伸ばしたら、上手くできた? 小さく開いて、唇とガムの間で隙間をなくす。
「そうそう、その調子だぜ。舌から離すんじゃねぇぞ。こう、だ」
 すぐ目の前で実践してくれるが、薄いガムの膜が見えるだけだ。そこから隙間が生まれて、スゥっと萎んでいく。
「わかんない」
「まぁ、練習あるのみだな」
 そう呆れて、ペッとゲーラがティッシュにガムを吐き出す。私も、味のしなくなったガムを出した。ガムってヤツは、いつもこうなる。ペロペロと唇の周辺を舐めて、ガムの残骸を確認した。どうも、まだ残ってるような気がする。ティッシュに手を伸ばしたら、グッとゲーラが顎を持ち上げる。
「受講料、まぁだ貰ってなかったな」
「それだけで?」
「それだけでもだ」
 と言い切ると、ゲーラがすぐに近付いた。


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