寝れないことにメイスが気付く

 怖い夢だ。中々不気味で、寝直すにも中々勇気がいる。
(最近、疲れてるのかな……)
 寝心地も悪いと、夢見も悪くなると聞く。今度、ベッド周りを見直した方がいいのかな……。そんなことを考えながら、ガウンを羽織った。冬の夜は寒い。真夜中だともっともだ。もしかして、最近寝心地が悪いのもそのせい? と思いながらリビングを通ると、ソファで寛いでるメイスの姿があった。
「あ」
 スマートフォンの灯りがとても明るい。メイスもまた、温かい格好をして夜のリビングを過ごしていた。
「寝れないのか?」
 その質問にコクンと頷く。「そうか」とメイスが頷くので、試しに聞いてみた。「なにしてるの?」と。そうしたら「休憩をしている」と返された。
「きゅうけい」
「根を詰めすぎてな、今部屋から離れている」
(また作詞作曲とかやってたんだろうか)
 たまにメイスの部屋から音楽とかエレキギターの音聞こえるし。そう思ったら、メイスの目が私に上がった。
「お前は?」
「寝れない」
 さっきも聞いたのに。聞き返したのだろうか? そう思ったらメイスがまた「そうか」と返す。「なにか作ってやろうか?」と尋ねながらスマートフォンも置いた。
「なにを?」
「なにか飲み物をだ」
 そう簡潔に返すので、お言葉に甘えることにした。けど、だからといってなにが良いのかはわからない。「とりあえず寝付けるものを」と返したら「そうか」とまたメイスが返した。パタパタとスリッパが音を立てる。
「酒は入れるか?」
「いらない」
「甘い方がいいか」
「うん」
「じゃぁ、あれだな」
 最後に独り言のようにメイスが呟いた。
 歩くメイスの後ろをついていく。キッチンに入ると、小さな手鍋を出し始めた。冷蔵庫も開いて、牛乳を入れる。コトコトと煮込み始めた。その間に、ハチミツも入れる。
「あ」
「お前、好きだろ。これ」
「うん」
 流石よく覚えてる。流石参謀。一度あったことは忘れないんだな。そう感嘆に耽ってたら、メイスがカップを取り出した。私のだ。そこに、手鍋で作ったミルクを注ぐ。
「ほらよ」
「ありがとう」
 軽く礼をいって受け取ると、温かい。「フーフーって冷ませよ」といってくるが、人を子ども扱いしないでほしい。フーフーするけど。ミルクの膜が、小さく揺れた。
 一口飲む。甘いミルクの味がした。
「寝れそうか?」
 そうメイスが聞くので「試してみる」とだけ返しておいた。


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