さざ波大雨注意報(卒暁後)

 今日は七夕らしいけど、すっかり雨だ。土砂災害の警報も出ている。部屋の都合からして、床下浸水する恐れはないけど。いや、上の階の住人が詰まらせたら、必然的にこっちも床下浸水させられるな。これは管理人に通報しないと。そう思っていたら、先輩が後ろから圧し掛かってくる。「俺たちが彦星と織姫に代わって、しっぽりやっちまおうか?」「はぁ?」とんだ口説き文句に罵倒が出てしまう。「素直にいえないんですか。正直に」そんな態度だと応じない、と出したら先輩が拗ねた。「んだよ。雰囲気ってもんを大事にしたってぇのに」「寒かったです」エアコンの温度も相まって寒い。もう少し温度を上げようか。
「なぁ」
 先輩が腕に手を回す。前で先輩の腕が交差して、ギュッと抱き締められた。身動きができない。
「しっぽりやっちまおうぜ? 千芳」
「だから、言い方」
 なんつー誘い方だ、まったく。こっちだって先輩の言い方が移ってしまう。しつこいようなので応じたら、熱が上がってそのまましちゃって。結局肌寒さで目覚めたら、お互い裸だった。先輩が後ろから腰に手を回して、抱き着いている。お尻に生温かくて変に柔らかいものを感じたが、気にしないでおいた。気にしない方がいいのだ、これは。うん。自分の首を触ったら、なんか湿っぽい。よく見たら、汗。(あー、そうか)汗だくになるほどお互い熱を上げちゃって、シーツも湿っぽく感じるという、そういうアレね。(困ったな)今じゃ生乾きするっていうのに。
 シャワーを浴びようとしたら、グッと身体を引っ張られた。腰をホールドする手が、さっきより堅くなる。(こ、コイツ)さては、起きてるな!? そう思い振り向くと、先輩は寝ていた。それでも、見続ける。不満な視線を送ったせいもあって、ゆっくりと先輩が目を開けた。寝惚けているものではない。完全に起きていた。瞼の作動自体がスムーズである。
「んなに急がなくても、いいじゃねぇか」
「早くシャワー浴びたい」
「どうせならよ、もう一戦しようぜ。もう一戦」
「あんなにしたのに? シーツも、洗いたいんだけど」
「気にするなって」
「気にするよ」
 軽く身体を押すけど、離れるつもりがまったくない。肘鉄を入れてやろうか。いや、それでも心惜しいような。これをする気配もなくなりそうだし。人が考えてたら、それをいいことにして、さらに先輩が密着してきた。(あの)何気に太腿の間へ、硬くなりつつあるものが挟まされる。
「まだいけるぜ?」
「こっちが持たない。もう」
「できるまでしようぜ」
「そう簡単にできないから」
「んでだよ。中に出してるんだぜ?」
「頭の中、ファンタジー?」
「少ない確率でも、できるってことはあるだろ!?」
「仕方ないなぁ」
 なんか、一回満足するまで出してあげた方がいいかもしれない。(でも、いつ言おうか)多分、先輩、誤解したままだろうし。ポスンと押し倒される。どこからピルについて説明するか考えながら、肌を吸われた。少し膝を擦り合わせる。動くたびに、出されたものがドロリとお尻を伝って、シーツに流れる。「やっぱり、洗いたい」「マットレス、いくらぐらいするんだっけ?」「買ってくれるの? なら、最高品質で」「勘弁してくれ。ローン地獄になっちまう」「なら買える範囲で」あの全国的に有名な家具量販店の最高品質なら、先輩の財布から搾り取れるだけ搾り取れるだけの値段になるだろう。ローンを組まない限りで。互いに譲歩する。先輩が弱いところを触ってきたせいで、身体がビクッてなる。
 頭が切り替えられた。


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