雨脚強い(在学中)

 突然、雨の勢いが強くなる。小振りと思われた雨足が段々と速くなり、辺りの視界を一気に奪う。これじゃぁ、進むのも難しい。慌てて近くの軒下に避難する。どうやらボウリング部の練習中らしい。ゴロゴロ、ポカーンっとピンの弾け飛ぶ音が聞こえる。確か、中に休憩するところあったような。一つ星専用娯楽用ホールだし、文化部と共同で使っているところがあるはず。
 中に入ろうとしたら、先輩が出てきた。
「あ?」
「えっ、どうしてここに」
「いちゃわりぃのかよ」
 ムッと先輩が顔を顰める。眉間に皺も寄せた。「運動部統括委員長である以上、各部活の様子を見るのは当然だろ」とも返された。それはそうだけど。(乃音先輩は、効率的に見ているというのに)そう思ったら、先輩がさらに機嫌を損ねた。
「んだよ。文句あんのか?」
「効率的に回ればいいのに」
「あぁ!?」
「情報戦略部に回ってくる情報が遅いです」
「ケッ。んなの、犬牟田の野郎が勝手に収集してるからいいんじゃねぇのか」
「そうじゃなくて」
 一つの不満を返せば、二つ三つの身勝手な理由で返ってくる。本当、そうじゃなくて、カメラや映像、音から拾った情報じゃなくて。
「ちゃんと本人の口から聞いた方が、信憑性が上がるってものですよ」
「はぁ? そういうことこそ、情報戦略部のお役目ってところだろうが。情報集めて精査するのが、向こうの仕事だろうがよ」
「そうですけど。そうじゃなくて。少しは負担を軽減しようと思わないんですか?」
「あー、全ッ然、そうは思わないね。こっちだって忙しいんだ」
(んな阿呆な)
 ただ部活動を見て回って、個人的に動くところが多いというのに? その部分が、なにかしら本能字学園ひいては皐月様に利益の働く分だ、というのは出てるけど。この辺りは、犬牟田先輩や他の人にはいってない。特に報告へ挙げる点ではないからだ。でも、少しは学園側の負担も楽にしてほしい。廻り巡って、私の負担も減るし。
「もう少し、報告を上げる機会を増やしてくれたらなぁ。助かるんですけど」
「はぁ? そういうときこそ、お前の出番だろうが。俺の代わりにそういった、細々とした面倒事を引き受けてくれるんだろ?」
「そういうのじゃなくて。ったく、もう」
 元々、補助的なところで動いているというのに。勝手なことをいう先輩に、少し困った。
(というか)
 どうしてわざわざ、雨の中だというのに出てきたんだろう。ザァっと強い風が、またこっちへ雨を戻してきた。


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