疲れた

 帰ってくるなり、ズルズルと床に倒れ込んだ。せめて布団に入るまで頑張ればいいのに。「大丈夫ですか?」と聞くと「大丈夫じゃねぇ」それに続けて「せめて敬語、やめろ」と要求を吐いてきた。まさか、ここまで疲れてたとは。床に倒れ伏す先輩の脇に腕を通して、どうにか持ち上げる。うっ、重い。どうにか全身で支えてると、先輩がさらに凭れかかってきた。
「重い、ってば、重い」
「せめて名前で呼んでくれねぇか? たまにはよぉ」
「そう弱音を吐かれても。疲れた、の?」
 危うく敬語で聞きそうになる。そう尋ねたら「おう」と力なく返事が返ってきた。グリグリと首や肩に頬ずりをされる。こういうときは、かなり疲れている顔だ。どうにかリビングの奥へ引き摺り、先輩の部屋に入る。和室だ。先輩はベッドより布団で寝るのが好きなのらしい。空いたスペースに一旦寝かせてから、布団を敷いた。一枚だけでいいいや。二枚あるのは、お察しで。敷布団を敷いて、枕を乗せて先輩をまた引き摺る。布団に寝かせたら、グッと先輩が腕を引っ張った。
「あの。寝るんじゃ?」
「おう」
「寝るんだよね?」
「寝るに決まってんだろ。疲れてんだからよ」
「じゃぁ、寝れば」
 いいのに、といいかけたところで止める。枕に顔を埋めた先輩が、ジッとこっちを睨んでる。これ、絶対拗ねた目だ。必ず、なにかをいいたげな目になる。(よっぽど、疲れてる顔だ)疲労困憊というか、もう動けないというか。そういう感じに近い。
 先輩に腕を引っ張られたまま、布団を寄せる。先輩の肩に布団をかけて、私も潜り込む。枕が一個しかないのが悲しい。ちょっと距離を寄せたら、先輩が腰を引き寄せてきた。ギュッと抱き締めて、頭に顔を埋める。「あー」なんて呻いた。なんというか、やっぱりベッドの方が恋しい。布団の中で抱き締められながら思った。


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