キスをした

 ちゅ、と音が鳴る。先輩がキスをした音だ。それが何度かして、唇が離れる。満足してしまったんだろうか? でも私はまだ、もう少ししていたい。クッと背伸びをする。踵を上げて距離を縮めると、先輩がちゅっとキスをしてくれた。もう一度キスをする。それが嬉しくて、もう一度背筋を伸ばした。ちゅっ、ちゅっ、と音が鳴る。唇を単純に合わせいるだけでも嬉しい。ギュッと先輩の腕を掴む。何度かキスをして満足したからか、先輩が離れた。私も爪先の力を緩めて、踵を下ろす。薄く目を開くと、興奮した先輩じゃない。極限まで顔を真っ赤にして、目を点にしている。ギチギチに固まっていた。口もポカンと開けている。先輩の腕から手へと指を滑らせると、同様に固まっていた。(もしかして、これ)先輩が、したのではない? 先輩の手を握り締めながら、自分の口を触る。確かにキスをした感触があった。こっちも恥ずかしくなってくる。カッと顔に熱が昇る。顔を隠そうとしたら、先輩が私の手を下ろした。握り締めた手で、指を絡ませてくる。このまま、近付くんだろうか? と思ったら目を細めない。キョトンとしたまま、私を見つめる。顔に穴が開くほど見つめたあと、先輩が口を開いた。
「い、今、お前からしたよな?」
 僅かに声が震えている。顔もさっき以上に赤い。先輩のその質問に、なにも返せなかった。


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