ジャンクフード

 海外で生まれてから一世紀弱、ここへ上陸してから半世紀くらいは過ぎようとしている。あんなに評価が低かったときもあったのに、今じゃここまで根強い人気を残している。それにも、それなりの理由があるものだ。
「美味しいですね。やっぱり。チーズの蕩けた具合も」
 そう感想を零すけど、先輩はなにもいわない。目の目でムスッとするだけだ。頬杖をついて、食べている私を見ている。
「ジャンクフードだから、中毒性も強いですね」
「そりゃ、ジャンクだからな」
「全国で人気になるのも頷けます」
「驚異的な中毒性に、この安さだ。そりゃ、買える層もデカいだろうよ」
「まるで、うん。人間の脳と舌を知り尽くしたかのような中毒性」
 そう分析していると、さらに先輩の機嫌が悪くなる。ギュッと眉間に皺を寄せて、目を閉じる。ググッと口をへの字に曲げた。
「どうしたんですか。いったい」
「いや、よ」
 理由を尋ねれば、不機嫌さに閉じた目が開く。薄く開けると、視線を下に反らした。顔を赤らめて、唇を尖らせている。
「んなモンより、こんにゃくの方が美味ぇだろ」
「まぁ、そうですけど。健康的な面を考えれば」
「それによ。それだって、こんにゃくを挟んだ方が美味いぜ? そうだな、板こんにゃくが良さそうだ」
「そう」
「これ、肉を捏ねてんだろ? それに細かく切り刻んだこんにゃくを入れるのも有りだぜ?」
「そうですか」
「あれだったら、よ」
 躊躇いがちに先輩が口を開く。最後の一口を食べていると、大きく深呼吸をしてきた。スーッと息を吸って、静かに息を吐く。耳の端まで顔を赤くしながら、ポツリといってきた。
「俺が、作ってやるぞ?」
「うーん」
 ジャンクフードとこんにゃくの組み合わせ、ちょっと思いつかない。端に寄ったタルタルソースを味わいながら、そう思った。


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