ある四天王会議の一コマ(在学中)

「あっ。そういや、ハロウィンがあったじゃねぇか」
 突然、先輩が思い付いたようにいった。会議中に、いったいなんだろう。ホワイトボートには、色々な案が書いてある。
「十月にもイベントあんだろ? それも入れればいいじゃねぇか」
「しかし、ハロウィンそのものはビックリ要素がある。ここは敢えて、時期をズラしてランダムにした方がいいんじゃないか?」
「っつーか、自分で決めればいいことじゃない。なんだって、わざわざ集まる必要があるのよ」
「予算の兼ね合いだ! 蛇崩!! 我々四天王で予算を四等分すれば、問題はないだろう?」
「それに足が出たり多めに余ったりした場合は、平和的に分け合うこともできるだろう? 暴力的に出る必要はない」
「なにせ、皐月様から四天王同士の私闘は禁止っていわれたからなぁ」
「殴り合いの決着もないわけですね。実に合理的です」
「そうそう、それ」
「本能字学園の生徒たちの強化及び選別も必要となる。これは必要な集会といえよう」
「そう、ねぇ。だっけど、文化部と運動部はそういうイベント事に参加する余裕はないわよ?」
「その通り! 各部活とも、それぞれ腕を磨くことに忙しいんだ!! 動けたとしても、蟇郡ンとこだけだろ?」
「だね。情報戦略部も、情報の収集及び解析とかで忙しいからねぇ」
「裁縫部との合同研究もありますし。手伝うことができても、風紀部だけが実働部隊として動くことになるかと」
「ぐぬぬ!」
「元々、私たちって単独で動くことが多いし。管轄している部活動は、最早こっちに割り振られた軍隊みたいなもんだからね」
「その兵士たちの育成に俺たちは時間を充てているというわけだ。すまんな、蟇郡。お前の手伝いはできねぇ」
「フンッ。元より当てにするつもりなどないわ!」
「なら、なんで集会をかけたのよ」
「さぁ」
 もしかしたら『全体の意見を募るため』の意見もあるかもしれない。もしくは、自分以外にこの予算を使う者がいないかと確認。(まぁ、一人で決めるのも、ってあるかもしれないし)あとは、決めたあとのイザコザを避けるためか。
 生徒会室で寛ぐ。ホワイトボートに『ハロウィン』の文字はあったけど、今のやり取りを聞いて消された。生徒会の一つ星生徒も大変だ。ピアノの旋律も、まぁまぁだけど。(リクエストって、できたっけ?)でも技術を求めるなら、乃音先輩のを参考にした方がいいかもしれない。
 カチカチとクリックをする。リアルタイムで入る情報を整理したら「おい」と猿投山先輩に声をかけられた。
「仕舞いだぜ、仕舞い」
「えっ、もう? 早くないですか」
「そりゃぁ、残りはガマくんに投げたからじゃない」
「なるほど」
 つまり、蟇郡先輩にお任せしたから、自分たちは消えると。早々に運動部統括委員長としての仕事や、文化部統括委員長としての業務に戻ろうとしている先輩たちの背中を見る。犬牟田先輩の方を見ると、また動いていない。
「先輩はどうするんです?」
「うん? 俺? 動くの面倒臭いから、もう少しここで作業するよ」
「そうですか」
「もしや文月! 貴様も風紀部の計画に付き合ってくれるというのか!?」
「おい、待て。何気に俺も数に入れないでくれるか?」
「そこまで決定権がないので無理ですね。助言はできますが、長期的なお付き合いはできません」
「クッ!」
「言い方、言い方。まぁ、情報戦略部としては、データを渡すなどの手伝いはできるかな。但し、貸し借りが前提だ」
「むっ。猿投山も蛇崩も協力できない上、犬牟田に貸しを作る形で協力を仰ぐことができると。ふむ、利子はいくらになる?」
「真面目、真面目。とりあえず、計画の大まかな部分は風紀部委員長がやるしかないかと」
「無論、そのつもりだ。問題はない」
「そうですか」
 じゃぁ、私もこのくらいで。席から立つ。出口へ向かっても止められなかったので、そのまま生徒会室を出た。
 相変わらず長い。トンネルの先には、本能字学園の廊下がある。まだ壁に刃物や銃弾の掠った痕があった。(戦士の勲章、というべき?)そんな軽度な損傷を見ていると、視界に白いマントが映る。誰かが出待ちをしているのだろうか?
 トンネルを抜ける。そこにいたのは、先輩だった。
「なにしてるんですか」
「いや、ちょっと。キューケー、してただけだ」
 なんか文句あっか、と聞き返してくる。そんな唇を尖らせて顔を赤くされても。それならそうと、自室で休めばいいのに。
「はぁ」
「で? どうすんだ。蟇郡の計画に乗るのか?」
「いいえ。手伝う余裕があるので。あくまでやるとしたら、補助的なお手伝いまでとだけ」
「そうか」
 そこまで伝えると、先輩がホッとしたような声を出す。顔色を確認する。先輩はキョトンとしていた。
(気のせいかな)
「それより、なんか腹減ってねぇか? こんにゃくあるぜ」
「どうしてこんにゃくなんですか。そんな余裕ありませんよ」
 それより自分の仕事に戻ってほしい。と思いながら、道中の途中までを一緒に歩いた。


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