意味のない質問(在学1年)

「突然、無人島でサバイバルに放り込まれたらどうしますか?」
「はぁ?」
 突然なにを言い出すんだ、コイツ。文月の顔をマジマジ見るが、本気だ。冗談をいってねぇ顔をしている。わけわかんねぇ。とりあえず、答えてやっか。
「まぁ、どうにか生き残るしかねぇだろ? 志半ばで死ぬなんざ、真っ平御免よ」
「そうですか」
「皐月様にリベンジするっつー目的も果たせてねぇしな」
「まだいうんですか、それ。いい加減にしてくださいよ。せめて、あの世で果たし状を送るといってください」
「あぁん? テメッ、ふざけてんのか!?」
「ふざけてないですよ。とにかく、それは心のどこかに仕舞ってくださいね」
「クッ」
 お前にいわれるまでもなく、わかってらぁ。ただでさえ、皐月様は悲願を果たすために色々と策を講じているところなんだぞ? そこで、余計な口を挟んだら失礼だろうが。(まぁ、隙さえありゃぁ一戦願いてぇところだが)俺の実力が見合うものとなれば、皐月様も一試合に応じてくれる。それを今、俺が果たし状を出さねぇのは、そういうことだ。今の俺じゃぁ、中学の頃の皐月様に敵うことができない。
(クソが!)
 歯痒さと焦りで壁を叩く。デケェ音に気付いたのか、文月が俺を見た。
「そこまで怒らなくても。平常心を保つことは大事ですよ」
「テメェにいわれるまでもねぇ!」
「八つ当たりしないでくださいよ。面倒臭いなぁ。もう」
「だったら話しかけんじゃねぇよ!!」
 うざかったら無視すりゃいいだろ! だったらなんで話しかけてんだ!? ガンッと頭突きする寸前で止まる。コイツ、襟首掴まれてガン付けられてんのに、ビクともしねぇ!?
「ちっさ」
「あん!?」
「背が、ちっさい。おかげで首が痛いです」
 突然強く引っ張られたし、と文月が眉を顰める。こ、コイツ! カッと顔が赤くなり、襟首を外す。スッと文月の背筋が伸び、軽く咳をしながら服を直し始めやがった。
「ケホッ、謝罪の一言もないんですか?」
「グッ。わ、悪かったな」
「そうですか。少しは堪えた方がいいと思いますがね。激情するってことは、図星ってことですよ?」
「うっるせぇ!」
「ほら、また手が出た」
 掴みかかろうとすると、ヒョイッと避けてくる。チックショォ、さっきのはわざとかよ!? ムカつくぜ!
「卑怯だぞ!」
「なにが? とりあえず、禅をオススメしますね。座禅。いいですよ、精神が統一される」
「あぁん!?」
「頭を冷やすのに打ってつけってことですよ」
 と俺のデコにデコピンをしてくる。ってぇなぁ!! 噛み付こうとしたら、文月は既に遠くなっていた。クソッ、逃げ足の速いヤツめ!
「まぁ、参考になりましたよ。いい参考にね」
 チッ、涼しい顔でんな捨て台詞を吐きやがって。なぁにが「いい参考になった」だ! テメェの考えが読めねぇんだよ!! まだデータ野郎の相手をした方がマシだ!
 そう怒声を投げつけてやろうと思ったら、もう文月が見えなくなっていた。クソ、なんなんだよ。アイツ。本能字学園の廊下にいるのは、俺だけしかいねぇ。
(まさか、幽霊と話してたなんてこと、ねぇよな?)
 普通、あんな一瞬でいなくなるわけ、ねぇだろ。グッと手を握り締めるが、確かにアイツを掴んだ感触はある。
「なんなんだよ、アイツ。クソッ、わけわかんねぇ」
 っつーか、考えるだけ頭が痛くなってくる。そりゃそうだ、兄貴ほど頭の出来はよくねぇ。はぁ、と溜息を吐く。赤くなったデコを擦って、とりあえず仮眠に戻った。
(クソッ! わけわかんねぇ)
 わだかまりはずっと寝るまで胸に残ったが。


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