素直上戸

 あっ。やべぇ。コイツ酔ってるわ。チューハイをテーブルに置き、千芳を見る。フラフラと立ち上がって俺に近付いたと思いきや、ストンと膝に座りやがった。(っつーか、そこ)ちょうど俺とお前のアソコが当たってるんだが? そうとは知らず、千芳が俺の首に抱き着いて、ギュッとしやがる。(クッ、コッチの気もしらねぇで)抱き締めたと思いきや、離れる。(んだよ。もう終わりかよ)だったら、さっさと寝ろ。そう思ったが、千芳は俺の肩に寄り掛かって寛ぎ始めた。あー、クソッ。右手も自由にさせてるもんだから、碌に動かせねぇ。あ、おい! やめろ!! 千芳の歯が俺の指の関節に軽く当たる。しかも、そこから甘噛みするのもやめろ! どう足掻いても俺の指は食えねぇに決まってんだろ!! そう叫びそうになるが、グッと堪える。だってよ、こんなの。滅多にねぇことじゃねぇか。千芳が、こんな甘噛みをしてくれることなんざ、滅多にねぇんだよ。すげぇ悲しくなってきた。普段から、こんな風に甘えてくれりゃぁ、いいものを。
 相変わらず、千芳は俺の膝の上で寛いでいる。
「なぁ」
「ん、ふぁ」
 おい。しゃぶるな、しゃぶるな。俺の指をしゃぶるんじゃねぇ。しかも、ちょっと、アレみたいな感じじゃねぇか。んな雰囲気で、しゃぶるんじゃねぇよ。俺が反応しないことをいいことに、また千芳が舌で舐めて甘く歯で噛んできた。
「楽しい、のかよ。それ」
「ん、ふぅ。渦の指、おいしいよ?」
 うぅ! ぐぅ、おま、お前。それ、ずっと心では俺の名前で呼んでたってことじゃねぇか!? 心臓が破裂して胸から飛び出しそうになった。いや、でも、俺は平常心を保ってるぜ? この通り。顔が熱いのは、あれだ、あれ。酒のアルコールが体に巡ってるって証左だ。おう。今度関節じゃなく、指の先から咥えて、しゃぶ、おぉ。
 ゾワゾワと背筋が震える。コイツ、本当にッ、俺が我慢してるってぇことに気付いてねぇのか!?
「ちょ、千芳。待て。おま、うっ」
「ふぅ、ふぁ。渦のゆび、おいしいね。んっ」
「いや、そういうことじゃなくて。ぐぅ」
 千芳の頬の肉が俺の指を吸い、舌が腹を舐める。や、べぇ。ムスコに同じことされるのを思っちまった。おかげで、俺のムスコがパンパンに膨らむ。やべぇ。このままだと、押し倒す。
「なぁ、千芳。待てって、ふぅ」
「ん、やらぁ。もう少し、もう少し」
 いや、おま、なにが『もう少し』だ!? 指から離れたと安心したら、今度は手の平だ。しかも、舌で、ツゥっと。おま、待っ。はぁ、やべぇ。やっぱ、この舐め方、まんまアレだろ。ただでさえこっちは、全身が敏感なんだぞ!? いや、エロい方じゃなく全身で世界を見るという意味でだなぁ!!
「グッ!?」
「ん、ふぁあ。ふぅ、ねぇ、しよ?」
 あっ。やべぇ。これ、我慢できる男なんざいねぇだろ。耳の溝を舌で突いて、甘く噛んでくる。ついでに甘い吐息のオマケ付きだ。普通に、押し倒すしかねぇだろ。
 俺の下で、千芳が見上げる。
「は、吐くんじゃねぇぞ」
「吐かないよ。おかしいなぁ」
 あぁ、クソ。酔っ払いめ! 負け惜しみを吐きながら、千芳の口にキスをする。あっ、やべぇ。あー、すげぇアルコールの匂いがするな。俺より飲んだ量は少ないはずだろ。ベロを入れて、千芳の舌を探る。あ、すげぇ楽に掴めた。そのまま舌も吸う。口も吸う。(これが本当の『口吸い』ってか)んな下らねぇこと考えて味わってると、千芳の手が俺の服に伸びる。あー、脱がそうとしているな。コイツ。
 一旦口を離して、シャツを脱ぐ。俺の裸を見て期待したのか、千芳が目を濡らした。喉が動く。百パー期待してんだろ、コイツ。フゥと息を吐いてから、千芳を抱きにかかった。


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