こんにゃくの塩はない

「おにぎりの塩があるなら、こんにゃくの塩があってもよくないか?」
 突然、渦がふりかけのコーナーでぼやいた。別にこんにゃくの材料を買いにきたわけではない。普通に食事や消耗品の買い出しである。ふりかけのコーナーは、単純に買い出しである。いつものふりかけがなくなったから。
「あく抜き、に使うんだっけ?」
「つか、うぜ。うん、使う。俺がいってるのはそれじゃなくてな」
 あ、使うんだ。いつも作る過程で使ってたからすっかり忘れてたけど。使うんだった。それであく抜きに使う塩じゃないと。
(特別な塩じゃないとしたら、まさか)
「こんにゃくの味付けに使ったり?」
「そうそれ! それだ!!」
「えぇ」
「んだよ、その反応は」
「だって。こんにゃくの塩味って。なんか」
 逆にありそうでなさそう。難しい。そうぼやいたら「そうかぁ?」と渦が尋ねてきた。
「そうだよ。逆に『こんにゃく用』ときたら想像がつかない」
「そこがいいじゃねぇか」
「ワサビ入りとか黒胡椒入りとか。逆にこんにゃく用じゃなくてもよくね? ってなりそう」
「まぁ、それでもこんにゃくの方が映える! ってのが一番のセールスポイントだな!!」
「はぁ、ともかく。他の企業と連携しないと難しそう。こんにゃく製造会社と塩の調味料を作る会社」
「うーむ、その辺りは兄貴に任すか。商談とかその辺り、兄貴の方が得意だしよ」
「私も賛成。餅は餅屋というし。で、その報告書っていつ作るんです?」
「あ? いるのか?」
「いるよ。そりゃぁ」
 それだけの収益ならどれだけのコストをかけるかっていう計算もできるし。そういうと渦は「ふぅん」といった。横のふりかけを手に取る。
「千芳はなにか買うか?」
「シソ入りのそれ」
「梅が好きだなぁ、本当」
 まぁ、俺も好きだけどよ。といって、渦がカゴに入れる。私のいったのもポスンと入った。頭の中で計算する。手持ちは大丈夫かな。
「足りるかなぁ」
「足りるだろ」
 渦は呑気そうにいった。


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