こんにゃくとポッキー

「あ、そうじゃなくて。ポッキー食べますか?」
 突然、コンニャクを食べていた千芳がいった。なんだ、コンニャクに不満か? 「あん?」と睨み返したら千芳が眉を下げた。しまった、そうじゃなかったか。わりぃ、という前に千芳が袋を開ける。
「一緒に食べたかっただけなのに」
 うっ。そんな拗ねた目をするな。こっちはそれに一方弱いんだぞ。こうなったら千芳は中々直らない。まぁ、タイミングもタイミングだ。こっちが作業を中断できるのを見計らったんだろう。とりあえず一旦中断し、手を洗う。
「そもそも、こんなところで食うもんじゃねーぞ」
「キッチンなのに?」
「コンニャクにゴミが入っちまうだろ?」
 といいつつ、千芳はポリポリと食うことをやめない。クッ、やめろ! 見てるこっちも食いたくなってくるだろ!!
「食べカスが入らないように、気を付けてますよ?」
「そりゃぁな」
 だから、そのクッてなんだ。クッ、て! 俺に食べろっていうのか!? 千芳の口にあるポッキーを見ながら思う。消えていくポッキーを見てたら「食べます?」と千芳がポッキーを咥えながらいった。
「おう」
 と答えてから齧る。わりぃが、こっちの方が食いたいんでね。驚く千芳の目を見ながらポリポリと食べ進める。クッキーの部分を食べ終えると、千芳も俺の意図を見たのか、ポリポリと食べ進めた。とはいえ、進むのはこちらの方が早い。千芳が二口目を食べるよりも先に、俺が半分まで食べる。三口目の頃にはもう目と鼻の先まで齧った。
(折るか?)
 千芳の反応を見るために、あと一口のところで止まる。じっと見ていれば、千芳の睫毛が微かに震えた。目を閉じたまま、口を開く。顔を赤くして、可愛いな。そう惚けてたら千芳があともう一口のところで止まった。千芳の口が溶けたチョコで濡れる。
(しゃぁねぇなぁ)
 自分から誘ってきたのに恥ずかしがる千芳に、最後の一口を食べてやった。


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