緑茶とこんにゃく

 コンニャクを一口食べる。あ、なんか味が濃い。
「あ、抹茶の味が強い」
 そういうと、先輩がポカンとした顔でこっちを見た。あ、コンニャク落ちそう。いいのかな。そう思って傾くコンニャクと箸を見たら、ハッと先輩が持ち直す。コンニャクと箸は救われた。そして先輩は涙ぐんだ。
「千芳、お前ッ!! ようやく、ようやく! コンニャクの味がわかったのか!?」
「コンニャクというか、まぁ」
 もぐもぐと口を動かす。正直、コンニャクはそれほど味はしない。ただ空腹を満たすためのコンニャクだ。今回の場合、コンニャクを製造する際に入れた粉の味が強いのだ。
「抹茶の味が、ですね」
「いいぞ! それでこそコンニャク道の第一歩だ!! その微細な違いから、コンニャク芋の違いも見分けることができるんだぞ」
(マジか)
 そんなこと聞いたこともない。っていうか、先輩はそれもわかるということなのだろうか。怖すぎる。コンニャク屋の次男坊は。そう思いながら、他の商品も食べてみる。
(うん)
 逆に味が薄すぎるような濃すぎるような、単純にその味がするシロップみたいなのを食べただけだ。そういう感想に近い。
「難しいですね、コンニャク」
「そうだろう? コンニャクの道は一日で成らずだからな」
「そうですか」
 食べながら頷く。猿投山こんにゃく本舗のこともいっているんだろうか。確かに起業も一日で成らず。ついでにコンニャクの新商品開発も、一日で成らずだ。
「単品で食べても美味しいのがいいかも。それと食感に合わないヤツは除外して」
「食感に合わないとはなんだ! 合わないとは!! コンニャクは万能な食品だろ!」
「確かにそれは置いといて。私がいってるのは、味付けしたの。なんか、コンニャクの食感とのギャップが凄い」
「じゃぁ、他に味を足せばいけるか?」
「かもしれない。けど、普通の料理でやるとさらにギャップが」
 豚カツやコロッケをコンニャクで味わおうとしたら、脳の理解が追い付かない。サクサクふわふわの揚げ物が、熱いプリップリのツルッツルのコンニャクで味わえるのだ。正直、このギャップが追い付かない。おっかない。
「先輩。和菓子でちょっとやってみましょうよ。白玉とか寒天とかその辺りで」
「んだよ。コンニャクは主食だぞ? けど、挑戦してみるのは悪かねぇな」
「そっちの方が少ないですし。ギャップ」
 なんか話は噛み合ってないかもだけど、とりあえず方針は決まった。先輩の買い占めたコンニャクを食べながら、とりあえずお茶を飲むのであった。


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