揉み心地

「ギュッてやんねーのかよ」
 ある日突然、唐突に、先輩がそういった。とはいっても、そんな必要性ないじゃないのか。そう聞いたら「そうだけどよ」と拗ねた。
「やる気チャージするにしても、そっちの方が早ぇだろ?」
「それは、そうと聞いたことはあるけど。でも、大丈夫なんじゃ?」
「大丈夫じゃねーよ。全然。だからな、ほら」
 さっさと抱き着いてくれよ。といわんばかりに先輩が手を広げてくる。仕方なく従えば、先輩は情けない声を出した。「あー」なんて。おっさんみたいな声を上げてる。ギュッて抱き締める力を強めれば、さらに強く抱き締め返された。
「もし極制服だったら」
「あん?」
「ベルトのトゲが邪魔になってたね」
「いつも外してただろうが。毎回」
「そうだったね。外してないと、大変だったけど」
 特にお腹とか胸の辺りとか足も。そうボヤいたら「悪かったな」と返された。
「忘れてたんだよ。いつも着けてるんだからよ」
「そう? そういえば、重くなかったの? トゲ」
「重ぇ。けど修行にはなった」
「ハリボテじゃなかったんだ」
「ねぇよ。どれもモノホンだ」
「本物なんだ」
 あの金属、本物なんだ。そう繰り返すと「知ってんだろ」と返された。
「主に、あの物音で?」
「実際に触ってもいただろ」
「確かに」
 冷たかったし、ツルツルもしていた。あと、着けるととても重かった。そう付け足す。すると、先輩が喉の奥で笑った。
「ブカブカだったよな」
「先輩の腰と、女性の腰。一緒にする方が野暮だと思う」
「鍛え方が違うからな」
「前にも、こうやって」
 先輩の手がお尻を撫でる。
「お尻、揉んできたよね」
「減るもんじゃねぇし。いいだろ」
「体力は減る」
「気持ちよかっただろ」
 否定はできない。正直にいうのが嫌なので、黙ってるけど。そうしたら、調子に乗って揉んできた。
「揉み心地、最高だな」
「それ、褒めてるの?」
「胸と違う揉み心地も味わえて最高だなって意味だよ」
 ムニムニと揉み続ける。ちょっと先輩の胸に胸を押し付けてみても「んっ」と頷くだけだ。そんなに違うんだろうか? 自分の脇で見てみるけど、わからない。
「揉み比べてみる?」
 先輩の腕に手を当てれば「おう」と返事が返ってきた。
「お前がいいんならな」
 そう許可を求めるので「いいですよ」とだけ返しておいた。


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