竹久々(現パロ)


何かやる気の起こらない朝だ。別に夜更かししたわけでもないのに、疲れが抜けきっていないとでもいうのだろうか、ひどく体が重たい。目覚めがすっきりしないと一日引きずるという自覚があるだけに、余計に溜息が零れる。ずるり、とこのままこの身をベッドに脱げ棄ててしまいたくなる。

「もう行かないとな」

誰でもなく自分に言い聞かせるのは、そうでもしないと再び布団の中に潜り込んでしまいそうだったからだ。洗顔も歯磨きも着替えも終え、それでも、外に出る気になれず、うだうだしていると、目覚まし時計が最終通告を告げた。いつも余裕を持って動くように考えているから、スムーズが完全に機能しなくなった時間まで部屋にいても、別に遅刻はしないだろう。それでも、あぁ、時間だ、と思うのは自分の性だった。恐らく、一生直らないであろう、性格。

(もうちょっと気を抜けばいいのに、か)

人生をのんびりと謳歌している友人の顔が思い浮かんで、ちょっと苦笑いを潰す。それはその言葉を言ってくる彼に「迷い癖をなくせ」と言うのに等しいことなわけで。土台、治すことは無理なことだった。だが、彼はそのことに一切気付いていない。

(だから、まぁ、よくそうやって言ってくるのだろうけど)

もし、それが押しつけがましく好き勝手に言うだけ言ってくるようなやつであれば、即、俺は彼から遠ざかっていただろう。人にずかずかと踏み入って来るようなやつは昔から苦手だったから。--------そう苦手だったはずだ。

***

「兵助っ!」
「……竹谷」

弾んだ声が俺の元に転がって来た。明らかにこちらの名を呼んでいるのに無視するわけにもいかず、視線だけ上げれば走って来たのだろうか、顔を熱で赤らめた彼は肩で息をしていた。

「すげぇ偶然だな。部活? それとも週番?」
「いや」
「じゃぁ、何なんだ?」
「……木下先生に用事があって」

何だっていいだろ、という言葉を呑み込んでそう伝えれば、竹谷は「そうなんだ」と頷くと、不意に俺を覗き込んだ。光で磨かれたような笑顔が、どことなく仄暗い冬の朝に咲いていて---------逃げだしたいのに、動けなかった足元でまだ色の抜けていない落ち葉が風に巻かれた。

「マジ朝から会えるとかラッキーだな」







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