風紀委員会

休み明けて月曜日。課題テストはあっという間に終わり、皆疲れたように机に伏したり友人と感想を言い合ったりしている。次はロングホームルームの時間なので特に準備も無く俺も席に遊びに来てくれた葵君達とのんびりお喋りをしていた。


「次は係り決めかー」


怜司君が背伸びをしながら言うのに葵君が頷いて何に入ろうかと腕を組む。二人がどんな係りがあるのか挙げてくれる中、俺はある話をどう切り出したものか考えていた。さらっと言えばいいんだろうけどなかなか自分も実感が無い上妙に言うのに緊張する。


「う〜ん……。ゆーまはどの委員会にはいりたい?」

「あ〜、えーっと……」

「うん?どうかしたか?」

「はい。席に着け〜」


鐘が鳴り、担任の先生が教室へ入って来る。着席を促す声に皆がガタガタと音を立て椅子を引くのに俺が言い淀んだ言葉は紛れて二人に届かなかった。


「はいそんじゃとっとと係り決めるか〜。先にどの委員会に入るか決まってる奴書き出していくぞー」


じゃあ頼んだと担任が渡した紙を見た眼鏡を掛けた生徒が短く返事をして黒板に白墨を滑らせる。並ぶ名前を見た二人が驚いた顔でこちらを向いた。何か言いた気な様子にぎこちなく笑って返す。驚く、よなぁ。俺自身驚いているし。


深緑の黒板に白い字で風紀委員と書かれた役職の下に、俺の名前。そう。信じられないが俺は何故だか風紀委員に入る事になってしまったのだ。



…………

………

……



友達が出来たり大変な目にあったり色々あった次の日のお昼。何故か俺はまた風紀室のソファに座らされています。目の前の席には昨日会った天蔵先輩、絹山先輩。斜め向かいの席に背の高い眼鏡を掛けた先生。そして見た事が無い生徒が壁際に一人。

急に絹山先輩が部屋を訪ねて来て連れて来られたんだけれど何この状況。昨日の葵君の事についてかと問えば違うと言われ首を傾げて座り数分。何にしても話があるんだろうけど、先輩達と先生で何か打ち合わせだか確認だかしているらしくこちらは絶賛放置中。居心地悪っ。


ソファまじふっかふか。レースのカーテン越しに差す日の光超あったかい。とか、どうでもいい事に気を逸らせてみても全然落ち着かない。訳分かんないまま来てるからちょっと怖いし泣きそう。葵君、怜司君ヘルプ。


……しかし、先生は置いといて、あの壁際の人は誰だろう。ネクタイの色は俺とも二年の天蔵先輩達のとも違うから三年生?この人も風紀委員なのだろうか。ここの所美形な人しか見ていない中、普通な男子高校生という風体をしている先輩。ちょっとほっとしてしまったのは失礼……だよなぁ。


「ごめんね?急にまた連れてきたりなんかして」

「えっ!あ、いえ、別に……」


ちょっとポケッと気を抜いた瞬間何かの書類を捲っていた絹山先輩が声を掛けてきて慌てて応える。とうとうお話の時間が来たか。やっとこちらに意識が向いた事に安心するが、何の話なんだろう。て言うかここ風紀室って事は何か俺やらかして指導受ける的な?昨日先輩に食らったばかりなのにまたお説教?え、やだマジ勘弁。


「別にお説教とかじゃないからそんなに畏まらないでね?」

「は、はい……」


考えていた事を直ぐに否定されてカチコチになっていた肩が落ちる。良かった……。
あからさまに安心した事が面白かったのか先輩達にも先生にも笑われてしまった。


「緊張させて悪い。……あぁ、そっちは風紀顧問の里美先生だ」

「よろしくな」

「は、はい。よろしくお願いいたします」


顧問の先生か〜。また格好良い人だなぁ。軽く手を上げて微笑んだ先生に会釈をする。ちょっとキツめな目付きだけど笑うと優しそうでほっとした。若く見えるけどいくつだろ。
先生に自分も自己紹介をして、次はもう一人の先輩かな、と思いそっちを見たのだが何故か何も言われず。絹山先輩が早速だけど、と前置きをして口を開いた。


「ねぇ吉里くん。風紀委員に入らない?」

「はい?」



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