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「上がり込んどいて何だが」

「?はい」


授業の進むスピードやら各先生の変な趣味など色々教えてもらいながら食べ終わり、食後のお茶を啜ってまったり一息。そんな時に先輩が少し真剣な顔をして話を切り出してきた。


「俺を部屋に上げて良かったのか?」

「はい?」

「この学園の妙な特色、聞いていないか?」


特色、と口にした時の苦い顔を見て、似たような顔をどこかで見た気がすると思った瞬間ハッとする。ほんの数時間前、俺は何を注意された?友達になったばかりの二人は何を念入りに気を付けるよう言ってきた?


『美形の人間には近付くなよ』

『いやがらせ、制裁ってをされちゃうの』



「あ〜……」


さっき何か忘れていると思ったのはこれか。方言聞かれたショックですっかり頭から抜け落ちていたわ。普通に接してたけど多分、この先輩はここで言う親衛隊が出来る美形だと思う。本当にかなりイケメンさんだし。葵君が見たらきっと見惚れるんだろうなあ。


「一応話は聞いているようだな」

「はい……」


あー、だから最初ここ来るの迷ったのか。そりゃあなんか被害を与えるかもしれないのに誘われたら困るわ。生徒が少ないこの棟だから来られたのであって。気を使わせていたのだと思うととてつもなく申し訳なくなってきた。でもここで謝るとこの人は更に気を使うような気がする。

あー、とかうー、とか言葉にならない呻きを上げながらどう言おうか考える。先輩も何を言おうか迷っているようだ。何か言い辛い気不味そうな様子をしているからいっそ不自然でも違う話に切り替えてしまおうか。……何に?
あ。そういえばここに出入り出来るという事は何かしらの役職についているんだよな。仕事しているって言っていたし。何をやっているんだろう?
ふと浮かんだ疑問に聞いてみようと顔を上げ声を掛けた。


「先輩」

「なんだ?」

「……あ〜、えっと、先輩もその、親衛隊?をお持ちなんですか?」


止めた。せっかくゆっくりしてくださいと言ったのに仕事を思い出させるような話をしたくはない。結局話を広げる事になるが親衛隊が無いのなら今の心配は杞憂として消えるし。と淡い期待を持って聞いてみた。


「……あぁ、有るな」


ですよねー。ありますよねー。むしろ無い方が可笑しいですよねー。……うあー。やっぱ誘ったら駄目だったってやつか〜。
でも、それでも折角来てくれたんだし、俺としても来てもらえて嬉しかったし。っていうかもう来ちゃったもんは仕方なくね?
次々浮かぶ言い訳を流しながら何と言ったものかと頭を掻いていると先輩がそれは一応大丈夫だ、と言ってきた。


「ちゃんと気を付けて来たし俺のはそこまで心配しなくていい。今日の所は、大丈夫だ」

「そう、ですか」


今日の所は。というのが気になったがそこまで言うならきっと大丈夫なのだろう。ほっと溜め息を吐いて急須に手を伸ばす。
けれど、今日が良かっただけだというのならこれから先は駄目という事か。葵君と怜司君は友達のままでいられたけれど、親衛隊のいる先輩とはこれっきりになってしまうのか。折角良い先輩と知り合えたのに残念過ぎる。

寂しい気持ちになりながら先輩の湯飲みにもお茶を入れ直していると、そうじゃなくてな、とこれまた歯切れ悪く先輩が口を開いた。


「うん。いや、勿論それも困った事なんだがどちらかというともう一つ」

「え?はぁ……」


真剣な声に姿勢を正して向き合う。まだ何か面倒な事があるのかと今後の学校生活がちょっと不安になってきた。短い沈黙にゴクリと喉の音が鳴る。先輩は迷うよう一度目を伏せた後、ゆっくり口を開いた。


「……そんな無警戒に、簡単に男を部屋に上げるんじゃない、と言いたいんだ」

「……はい?」



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