風紀室

教室で自己紹介や諸連絡を受けた後言われていた通り風紀室へと三人で連れ立って歩く。その途中、二人に気付かれないようこっそり溜め息を吐いた。いやぁ舐めていた。何がって、この学園の顔面偏差値を。

初めて会う人皆美形で俺の知り合いマジすげぇとか思ってたら、行く道擦れ違う人の中にも教室で自己紹介する人の中にも可愛い、綺麗、格好良い。そんな人がいっぱいいた。と言うかそんな人ばっかりだった。いや来た時から何となく多いとは思っていたけどさ。ここまでとは思わなかったんだよ。
勿論俺のような平々凡々なあっさり醤油顔の人もちゃんといる。けれど一般の学校、……一般の高校に行ってないから詳しくは分からないけどそれでも普通より明らかに煌びやかだった。お金持ちの人の家は経済だけでなく容姿も富んでいるのか。寧ろ太ってたり何だり、なんか駄目っぽいイメージあったのに。……それは失礼過ぎるか。

ふと、保健室から教室への道中の会話を思い出す。







「そうそう。話し忘れてたんだけどさ。親衛隊について一つ注意」

「あ、はい」

「あんな。特に人気の高い特別美形なヤツらの親衛隊とかって、対象に近付いただけで抜け駆けとか言って嫌がらせしてくるコトあっから、近付かないよう注意しろよ?」

「……えぇ?」

「ぼくのいる会長さまのとこみたいにちゃんと統率されてだいじょーぶなとこもあるんだけど、それでも個人でぼーそーする人もいるから、ね」

「え、えっと。じゃあお二人とももうお話し出来ないんですか?」

「「え?」」

「小町君は可愛いし、清崎君は格好良いし……」

折角友達出来たと思ったのに……と、落ち込む俺に慌てた二人が自分達は大丈夫って言うか普通だ、だなんて言って慰めてくる。半信半疑ながらそれに一応納得してほっとしていると、急に清崎君が吹き出した。

「っていうか面と向かってカッコイイはないよな」

「だよね。まっ、ぼくがかわいーのは事実だけどね!」

「おいっ」

二人の掛け合いに俺も堪らず噴き出し、そのまま暫く三人で笑い合う。いきなり友達解消とかじゃなくて良かったととても安心しながら講堂へ行ったのだった。







回想終了。もう一度周囲の生徒を見回すと綺麗所しかいなかった。やたら謙遜するなぁと思ったけど、本当にここじゃこの二人、普通レベルなのか。あれ?じゃあひょっとするとここでは俺は不細工の部類なのか?地味にショックだ……。
ちょっと落ち込んだけど不意に沸いた疑問に顔を上げる。二人の言ったように美形が多いこの学園。いったい誰が親衛隊を持っていて、誰が持っていないのか。
格好良い人は格好良い。可愛い人は可愛い。そこで思考が止まる俺にとってどっからが彼等にとっての美形になるのかのボーダーが全く分からない。特別美形な人を避けろと言われても果たしてそこを区別して行動出来るのだろうか。
そんな新たな問題に頭を悩ませながら二人に合わせ足を動かした。


さて。今テクテクと向かっている風紀室というのは別棟とやらにあるらしい。パンフレット見た時から思っていたがこの学園はなんかもう無駄に広い。生徒が多いのもあるのだろうが、改装や増築がよくあるらしく色んな建物がある。そしてやたらと金が掛かっていた。設備や教材等は常に最新の物を取り入れているそうで殆どが新品。年期が入った壁や備品はボロボロで落書きされてたりもした俺の中学時代の物とは段違いだ。金は天下の回り物と言うからそうやって使うのは良いと思う。寧ろガンガンお願いします。けどなんか上のとこだけで回っていそうだなぁこれ。

その中でも今いる風紀室や生徒会室のあるこの棟は特に金を使われているとの事。おまけにそれらの部屋には学校の重要な書類がいっぱいな為防犯警備関連の設備も半端ない。出入り口は関係者の持つカードキーが無ければ開かないし、流石に専用の警備員さんが立ってまではいないけどたまに風紀委員の巡回があるらしい。どんだけ厳重なの。

今回俺達は風紀委員長さんに去り際渡された特別許可証とやらを首から掛けている為入られたけど普段は一般生徒立ち入り禁止な建物なんだとか。滅多に入れないそんな場所を歩けているという事で二人は静かにしつつもかなりテンションが高い。あっちこっち見回して、小町君なんかワクワクとスキップでもしかねない。
それとは対照的に俺は知識が無くても高そうだと分かる絵や壺の値段を考えてしまい、近付かないようにと胃をキリキリ痛ませながら歩く。風紀室はきっとかなり豪華に違いないと二人がキャッキャと話す半歩後ろを歩きながら辿り着く前に庶民の蚤のハートはボロボロ寸前。もう、廊下だけでも十分過ぎる程金使ってんじゃん。まだ凄いの?でもそりゃ廊下以下な部屋なんか作る訳ないよね。
早く着きたいような見たくないような、複雑な心境でやっとこさ足を動かし続けた。

そうして着いてしまった風紀室。やっぱり扉が豪華です。ノッカーなんて初めて見ました。

「失礼します……」

緊張しながらノックし、返事の後入った瞬間、どこの豪邸だ、と思った。絨毯やソファ、机椅子、カーテンまで高級感溢れる部屋です。ヤバイです。ここまで来る過程で削られたライフがまたガガッと減った気がする。


あぁ、もう帰りたい……。



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