自己紹介

歩きながら改めて四人自己紹介をする。

小柄な方の同級生は小町葵(こまち あおい)君と言うらしい。
柔らかい髪はふわふわとした明るい茶色で少しつり気味の大きな目と相まって猫のようだ。男にしては可愛らしい顔立ちで、小さく華奢な体格でもありパッと見女子のようにも見えた。

背の高い同級生は清崎怜司(きよさき さとし)君。
中等部ではバスケ部に入っていたらしく、しっかりと筋肉がついていて顔もなかなかに格好良い。ケンカもかなり強いようだし、ニコニコと笑う優しげな雰囲気もあって女の子にかなりモテそうだ。小町君とは小等部からの幼馴染だと話された。

そして風紀委員長の天蔵誠志(あまくら せいじ)先輩。
落ち着いて見てみるとえらい男前な方でした。清崎君よりも背が高く、がっしりとした体は威圧感があるが笑顔は優しそうな雰囲気を持っている。

そんな感じで三人が三人とも、ちょっと種類が違うがとても整った容姿をしていて。思わずボケーっと口を開いて彼等を見る。何だこれ凄い。
ちなみに、俺はというと。
背は低くはないが高いという程でも無く。筋肉があまり付きにくいのかひょろりとした体格。そして特に特徴が無く、あんまり人の印象に残らないような凡庸な顔立ち。良く言えば親しみやすい。はっきり言えば地味。
……うん。何か俺、めっちゃ浮いてる。この四人の中で俺だけ地味。別に自分の容姿に悲観したりはしないが、何かちょっと切ない。

落ち込みそうになるのを耐え喋りながら歩く内に保健室へ辿り着く。ちゃんと治療してもらえよと手を上げて仕事へ戻る先輩に頭を軽く頭を下げ振り返ると、小町君がうっとりした顔で先輩の行った方向を見ていた。

「かっこよかった〜。まさか天蔵せんぱいが助けにきてくださるなんて」

「おい、助けたのは俺と吉里だぞ」

そーだけどー、とすっかり元気になったらしい小町君は明るい口調で清崎君の腕をぺしぺし叩いている。清崎君はムスッと拗ねた顔をしていたけど、笑顔が出て良かった。

「吉里くんもそう思うよねっ?」

「へっ?」

突然話を振られて驚きつつ、そうですねと曖昧な返事をして頷く。確かに天蔵先輩は格好良かった。たぶん強いから他に援軍とか来ても倒してくれそうだし、来てくれて良かったと思う。よく分からないけど。
生返事でも嬉しそうに笑う小町君に対して清崎君はすっかり呆れてしまったのか半目で会話を聞いていた。

「風紀委員だから親衛隊はないんだけど、それでもこっそりファンクラブみたいなのはあるんだよ?そんなせんぱいがきてくれたんだよ?すごくない?すごいでしょ!」

「……親衛隊?」

キラキラと目を輝かせて興奮した様子で話す小町君の台詞にいくつか引っ掛かりを覚える。親衛隊?ファンクラブ?え?先輩まさかアイドルとか芸能人とかなのか?
驚いて訊ねるとキョトンとした顔を向けられた。あれ?俺が知らないだけで実は物凄く有名人だったりするのか?てか親衛隊とファンクラブの違いって何だろう?同じじゃないの?
思考が混乱でグルグルしてきた頃。清崎君があー、と声を上げた。

「そういえば吉里って外部生だよな?今までまったく見たコトない顔だし」

「え、はい。そうです」

「あ、そっかー。それじゃあわかんないよね。ごめんごめん」

そう笑って言われ、混乱は収まったが疑問は更に渦巻く。説明してもらおうとした瞬間、保健室の扉が開かれた。

「風紀から連絡が来て待ってたんだけど……。まだ入ってこないのかな?」

苦笑を滲ませた白衣姿の先生が顔を覗かせる。話に夢中になってうっかりしていた。謝罪すると笑って入室を促されて慌てて部屋に入った。







「この学園がどんなトコなのか、どれくらいしってる?」

先生に治療されながら小町君が聞いてきた。俺は消毒だけなので自分でやっている。清崎君がやってやろうか?と言ってくれたけど、ニヤニヤしているので悪戯する気なのだろうと丁重に断った。そうして問われた事を一度頭の中で反復した後、登校中や体育館へ行く途中での光景を思い出す。

桜に煙る並木道。まだどこかひやりとした風が吹く日差しの中を制服を着た生徒達が歩いて行く。体格の良い男らしい生徒もいれば一瞬女かと見間違えるような可愛らしい生徒もいる。が、どんな生徒も全員ズボンを穿いている。たまに芸能人のような外見の人もいて、まぁ華はあるかもしれないがなんともむさ苦しい光景である。見える範囲も見えない所にも男、男、男。


そう、この学園には男しかいなかった。



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